【7月20日 AFP】「私たちは死ぬかもしれない」と、6人目の子どもを出産間近のアスマト・ニサ(Asmat Nisa)さんは言う。インドとパキスタンが領有権を争うカシミール(Kashmir)地方のパキスタン支配地域の人里離れた山岳地帯には医師がほとんどおらず、出産は命懸けだ。

「ここには病院がなく、女性の医師は見たことがない」と、カシミールのニーラム渓谷(Neelum Valley)にあるアランケル(Arang Kel)村に住むニサさんは言う。

 医師が女性であることは重要だ。地元の慣習では、男性の医師が妊婦や出産中の女性を診ることが禁じられている。

 この制限に加えて、渓谷特有の厳しい天候と孤立した遠隔地という地理的条件から、この村での出産は母子ともに死の危険を伴う。

 パキスタン支配のカシミールで子どもの健康のディレクターを務めるファルハト・シャヒーン(Farhat Shaheen)氏によれば、赤ちゃん1000人当たり44人が死産か生後1日で亡くなっているという。

 子ども支援の国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)」は2014年の報告書で、パキスタンは死産と生後1日で死亡した新生児を合わせた死亡率が世界一高く、赤ちゃん1000人当たり40.7人だと示した。

 同報告書では、欧州では生後28日以内に死亡する赤ちゃんは1000人当たり5.9人とされた。内戦で荒廃した隣国アフガニスタンでさえ、死産と生後1日で死亡した新生児を合わせた死亡率は赤ちゃん1000人当たり29人と、パキスタンよりも低かった。