■給与で優遇

 冬には1.2~1.5メートルの雪が積もり、川を利用した水力発電で照明に使う程度の電力しかない不便さが、この地域で医療従事者が働きたがらない大きな要因だとカーン氏は指摘する

 昨年、ハビブ・ウラー(Habib Ullah)さんの妻は出産時に合併症を引き起こし、設備が整っていて女医もいるカシミール地方のパキスタン実効支配地域の中心都市、ムザファラバード(Muzaffarabad)の病院に搬送されたが、新生児はその8時間の道のりの途中で息を引き取った。

「妻は死にそうだったが、幸運にも助かった」と、彼は言う。だが医療費の支払いのために20万ルピー(約20万円)の借金を余儀なくされたという。ウラーさんの月給の約20倍の額だ。

 カーン氏によれば、2007年に設立された「リプロダクティブ、母親、新生児、子どもの健康」(RMNCH)プログラムは、カシミール地方で働く医師に特別なインセンティブを提供しているという。

 パキスタン政府はカシミールの田舎に勤める医師の平均給与を月額8万ルピー(約8万円)に固定。都市部で働く医師はこれより低い同6万5000ルピー(約6万5000円)だ。

 政府はまたRMNCHプログラムの医療従事者の訓練事業に5億ルピー(約5億円)の予算を付けた。(c)AFP/Sajjad QAYYUM