【2月8日 東方新報】中国の研究者が、国産の「脳-コンピューターインターフェース(接続装置)」を埋め込んだ四肢まひ患者2名のうち最初の1名が、いくつかの運動能力を回復したことを発表した。 

 最初の患者は、2010年の自動車事故で首から下がまひした54歳の男性。北京市の首都医科大学附属宣武病院で昨年10月24日、臨床試験として脳信号をコンピューターにリンクさせる国産のインターフェース装置を埋め込む手術を受けた。

 この装置は「ニューラル・エレクトロニック・オポチュニティ」と呼ばれ、コインほどの大きさのワイヤレス装置で、生体を傷つけることが少ないのが特徴だという。患者の頭蓋骨内に二つの装置が神経組織を傷つけることなく装着された。 

 患者は10日後に退院し、自宅で3か月のリハビリとトレーニングを受けた後、現在は特殊なグローブを着用することでボトルをつかみ、水を飲むことができるようになった。

 この装置を宣武病院と共同開発した清華大学(Qinghua University)は1月31日に声明を出し、このグローブは頭蓋骨に埋め込まれた装置と神経学的にリンクしているもので、機械学習アルゴリズムが整えば、患者は自分で食事ができるようになり、システムをさらに発展させれば、患者が複数の手の動きと機能の回復も可能になると説明した。

 宣武病院の院長で外科チームのリーダーである趙国光(Zhao Guoguang)は、北京広播電視台(Beijing Radio and Television Network)のインタビューで「このグローブを着用することで患者は90パーセントの精度でボトルをつかむことができる。また患者の脊髄の損傷された機能も改善の兆しがあり、患者は手に温度差を感じ始めた」と話した。

 脊髄を損傷した2人目の患者は、12月19日に北京天壇病院で装着手術を受けた後、自宅でリハビリ中だが、こちらもシステムは正常に機能しているという。 

 なお、これら二つの外科手術試験は、事前に倫理審査に合格し、国内と国外で登録されているとのことだ。

「脳-コンピューターインターフェースシステム」は、脳とコンピューターなどの外部デバイスとの間のコミュニケーションパスを構築し、脳信号を追跡・分析するものだ。専門家によれば、この技術は脊髄損傷や筋萎縮性側索硬化症、てんかんなどの疾患を持つ患者が運動機能を回復する助けになり、人びとの情報処理能力を高めるのにも役立つ可能性があるという。

 この分野に取り組んでいる最もよく知られている機関の一つが、米国の億万長者イーロン・マスク氏(Elon Musk)によって設立されたニューラリンク(Neuralink)だ。 

 マスク氏は1月29日に、同社の装置が初めて患者に埋め込まれ、初期の結果では有望なニューロンのスパイク検出が確認されたと発表した。

 中国の研究者は「国産の脳-コンピューターインターフェースシステムは、脳組織を損傷せずに埋め込むことが可能で、炎症、傷跡、その他の不利な条件を回避できるという点で、外国製のものより優れている」説明している。

 またもう一つの利点は、この中国のシステムは人体内にバッテリーを入れる必要がないことだという。 

 清華大学は「研究の次の段階は、損傷した脊髄セグメントの部位で神経成長を促進するリハビリ・プロトコルを進めることだ」と話している。

 趙院長は「アルゴリズムの構築、治療方法の拡大、脳-コンピューターインターフェースシステムの診断と治療のプロトコルの策定にさらに努力を重ね、技術の応用範囲を広げ、より多くの患者に利益をもたらすようにしたい」との抱負を述べた。(c)東方新報/AFPBB News