【2月4日 東方新報】中国の研究者たちが学術誌「ネイチャーコミュニケーションズ(Nature Communications)」に論文を提出し、クローン化に成功した健康なアカゲザルが2年以上生存したことを発表した。

「ReTro」と名付けられたこのサルは、成体に達した世界初のクローンアカゲザルである。

 この研究は、胚への栄養供給を助ける細胞の一種を置き換えることで、霊長類の有望なクローン戦略が見つかり、霊長類の生殖クローンメカニズムの理解が深まり、その効率を向上させる可能性があることを示唆しているという。

 1月16日に発表されたこの論文によると、従来のクローン法では、ほとんどの哺乳類の出生率が1パーセントから3パーセントと極めて低く、胚や新生児の死亡率も高い。

 これまでの研究で、クローン子豚やクローンマウスは、人工授精で生まれた子豚やマウスに比べて胎盤の構造に異常が見られ、ウシやヒツジの胚は胎盤の欠陥により胎児が死亡していることが指摘されている。

 中国の研究チーム、「中国科学院脳科学・知能技術卓越創新センター」の孫強(Sun Qiang)、劉振(Liu Zhen)、「中国科学院遺伝・発育生物学研究所」の芦福龍(Lu Fulong)たちは、「細胞置換法」を確立し、クローンアカゲザルを2年以上生存させることに成功した。

 孫氏とそのチームは過去10年間、霊長類のクローン技術研究に専念し、いくつかの重要なブレークスルーを達成し、国際学術界に大きな影響を与えた。

 約20年前、孫氏は雲南省(Yunnan)シーサンパンナ(Xishuangbanna)・タイ族自治州の山中に4年間滞在し、毎日山のサルと一緒に過ごし、観察と研究を行った。そして2007年初め、中国初の試験管マカク(オナガザル科マカク属、Macaque)の飼育に成功した。

 これは孫チームの最初の代表的な成果で、その写真は今でも孫氏の机に飾られている。

 中国で世界初のクローンザルが誕生した17年には、「クローンザル」という言葉が中国の「国家語言資源監測・研究センター」によって人気の「科学技術用語トップ10」に挙げられ、中国科学技術部によって18年の「中国科学進歩トップ10」にも選ばれた。

 孫氏は「この技術は生物医学研究への応用において、一貫した遺伝的背景と遺伝子型を持つ非ヒト霊長類動物モデルを構築するために使用できる可能性がある」と言う。

 クローンアカゲザルの「中中(Zhong Zhong)」と「華華(Hua Hua)」は現在、性的に成熟し、非常に健康で、他のサルと生活し、子孫を残していると孫氏は語った。

「中国科学院神経科学研究所の「非ヒト霊長類プラットフォーム」は、江蘇省(Jiangsu)蘇州(Suzhou)市の太湖(Taihu)に浮かぶ西山島の中にある。劉氏はわずか30歳で、この研究所で最年少のチームリーダーとなった。

 彼は17年にサルのクローニングという課題に取り組む際、約6か月間、1日最大6時間も顕微鏡の前に座り、マウス胚を操作し、卵細胞核の除去を10秒未満で完了させる技術を磨いた。獣医学チームも24時間体制で、サルの月経周期や出産を観察した。

 生まれたばかりのサルは、夜間でも2~3時間おきに授乳する必要がある。精神的な覚悟がなければ、この仕事をうまくこなすのは難しい。このプラットフォームが最も困難だった時期には、チームに7名しか残っていなかったが、彼らは辛抱し克服した。

「過去何年か、何人かの研究者が獣医として就職を希望してきた。彼らには『まずはサルに慣れ親しんでほしい』と頼んだ。しかし1か月余りで、生活環境が十分でないとか、ゼロからサルの獣医トレーニングを始めるのが受け入れられないという理由で、彼らは去っていった」と、孫氏は当時の様子を回顧する。

 霊長類のクローン技術の新たなブレークスルーは、国際的に活発な議論を巻き起こしている。しかし、孫氏とそのチームは努力を続けている。今週彼は雲南省の「サル研究基地」に到着し、新たな研究に乗り出したばかりだ。(c)東方新報/AFPBB News