【1月19日 AFP】イスラム組織ハマス(Hamas)に拉致されたイスラエル人のヨタム・ハイム(Yotam Haim)さん(28)は、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)でイスラエル兵に誤って撃たれ死亡した。だが、ヨタムさんの母親は、軍を責めるつもりはないと話す。

 母親のイリス(Iris Haim)さん(57)は先月息子の死を知った時も今も、同じ気持ちだと話した。

 イリスさんは知らせを受けた直後、息子の死に関わった部隊に「怒りは感じません。あなたたちが難しい状況に置かれていたことを理解しており、あなた方を敬愛しています」とのメッセージを送った。これを兵士の一人がソーシャルメディアに投稿し、大きな話題となった。

 イリスさんはその後、公の場で同じメッセージを読みあげ、多くのイスラエル市民から英雄視されるようになった。

 イリスさんは今週、AFPのインタビューに応じ、「人を非難したり、過ぎたことを蒸し返すのは好きではない」と話した。

「ヨタムを生き返らせることはできないが、物事を前向きに捉えようと選択することはできる」

 イスラエル軍は調査の結果、ヨタムさんと他の人質2人は、3人を脅威だと勘違いしたイスラエル兵らによって殺害されたと断定した。

 ヨタムさんらは昨年12月10日に拘束されていた場所から逃げ出し、ガザ地区内を5日間さまよった後にイスラエル兵に遭遇し、ヘブライ語で呼び掛けた。

 軍によると、兵士らはこれをハマスのわなだと考え、3人に向けて発砲した。

 銃撃当時、3人は上半身裸で、うち1人は白旗を持っていたことも調査から分かった。

 ヨタムさんは10月7日のハマスによるイスラエル奇襲の際に、キブツ(生活共同体)「クファルアザ(Kfar Aza)」から拉致された。同キブツでは約50人の住民が殺害された。

 この襲撃で、ハマスはイスラエルから約250人を拉致し、ガザ地区に連れ去った。