■嘆く代わりにたたえたい

 奇襲直後から、イリスさんは人質の家族らで作るキャンペーン・グループの顔だった。グループは大きな影響力を得て、政府に人質の救出を最優先するよう圧力をかけた。

 当局を批判する家族もいる中、イリスさんは当初から当局批判には加わらなかった。

 イリスさんは、ガザ地区で戦っている兵士の命は自分にとって極めて重要だと話した。軍の発表によると、ガザでの戦闘でこれまでに少なくとも兵士189人が死亡している。

 看護師で終末医療を専門とするイリスさんは、息子の死をいつまでも嘆き悲しむ理由はないと考えている。

 嘆く代わりに息子をたたえ、この状況から何かしら前向きなものを残したいと考えている。

「ヨタムの勇敢さが記憶され、たたえられることを心から望んでいる。ひと月や1年で忘れられてほしくない」と話した。

 キブツ襲撃後に移った仮住まいのアパートには、赤毛のヨタムさんの写真がいたる所に飾られている。

 ヨタムさんは音楽とスポーツを愛し、最後には英雄になったが、不安や精神的問題を抱えていた1人の人間でもあった。

 イリスさんは、「困難に直面し、自分の力で乗り越えた」息子の人生は他の人に勇気を与えるかもしれないと話した。

「息子は人生を自分の手に取り戻し、危険を冒し、自由になり死んだ」 (c)AFP/Michael BLUM