【1月22日 AFP】イスラエル・テルアビブにあるカフェのテラス席で、男性が周囲を気にしながら同席者に顔を近づけた。男性は反戦活動家で、相手は兵役義務の拒否を計画している女性だ。ただイスラエルでは、兵役義務を拒否すると、刑事施設に収容される恐れがある。

 男性は活動家のネーブ・シャブタイ・レビンさん(20)。「(兵役義務)拒否の決断には勇気がいる」と語った。レビンさんも兵役を拒み、刑事施設に115日間収容された。昨年3月、出所した。

「武力衝突が起きている今は、普段以上に勇気が必要だ」。隣に座るソフィア・オールさん(18)について、そう話した。

 先月、兵役を拒否した十代のイスラエル人、タル・ミトニック(Tal Mitnick)さん(18)が刑事施設に収容された。昨年10月、イスラム組織ハマス(Hamas)の奇襲に端を発した武力衝突開始以降では初の「良心的兵役拒否者」となった。

 兵役拒否者のネットワーク「メサルボット(Mesarvot)」に所属するミトニックさんの一部支援者は、ミトニックさんに呼応する形で、パレスチナ自治区でのイスラエル軍による攻撃と占領に対して公に抗議の声を上げている。

 軍隊が国のアイデンティティーにおける礎であり、また兵役も重要な通過儀礼として扱われるイスラエルのような国では、兵役の拒否は政治的な孤立につながる。特に武力衝突が起きている間は民族主義的な感情が高まるため、それが顕著に表れる。

 ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)政権が勇ましい言説を並べ立てる中、「リフューズニク(拒否する人)」と呼ばれる兵役拒否者には裏切り者のレッテルが貼られ、殺害をほのめかす脅迫も届くという。

 レビンさんは周囲を気にしながら、武力行使反対の姿勢を公にすることには「危険」が伴うと声を潜める。イスラエルでは性別を問わず、18歳で兵役義務が課される。

 しかし、オールさんの意志は固く、ためらいは見られない。公開フォーラムですでに、2月に予定されている徴兵に応じない考えを表明している。

「私の良心が兵役を許さない」と、オールさんはAFPに話した。

 ハマスはイスラエルの生存権を認めていない。それでもオールさんは、その暴力的なイデオロギーを武力によって消し去ることはできないと考えている。

「私たちは火をもって火を制しようとしている」