【11月22日 AFP】パレスチナ自治区ヨルダン川西岸(West Bank)にあるオリーブの林で、ユダヤ教のラビ(宗教指導者)のアリク・アッシャーマン(Arik Ascherman)氏(64)は、重い防弾チョッキを身に着けて猫背気味になりながら警戒に当たっていた。守っている相手は、オリーブの実を収穫しているパレスチナ人たちだ。西岸ではこのところ、パレスチナ人を標的にしたイスラエル人の入植者による攻撃が激化している。西岸の60%は、イスラエル軍が全権を持つ被占領地だ。

 イスラエルの団体、「人権活動に取り組むラビ(Rabbis for Human Rights)」に所属するアッシャーマン氏は10月7日にイスラム組織ハマス(Hamas)がイスラエルを越境攻撃したことについては、「弁明の余地はないし、説明も要らない。正当化することはできない」と非難した。

 一方で、ハマスの奇襲以降、イスラエル人入植者によるパレスチナ人攻撃が増加しているという報告に関しては、「今の一般的なイスラエル人には、パレスチナ人テロリストと、おびえているパレスチナ人とを区別する準備はできていないし、しようともしていない」と話した。

 タイベ(Taybeh)村郊外で取材に応じたアッシャーマン氏は、「これは二つの民族の全面戦争だ」と指摘した。「(イスラエル人は)苦痛と怒りの感情から、今は誰もパレスチナ人を助けようとはしない」

 だが、「誰もいない」というのは誤りだった。すぐ近くには、数こそ少ないが、アッシャーマン氏に協力する人々が見張り役として立ち、パレスチナ人に嫌がらせをしに来る入植者がいないか目を光らせている。

 アッシャーマン氏は、西岸で入植者による暴力行為を阻止する活動を続けてきた。「こういう活動を始めて28年以上になる。自分が少数派だと思ったことはほとんどなかった」と言う。

「これまでは、私たちの活動に理解を示してくれるイスラエル人が一定数いた。積極的とは言えないにしても」

「それが、今ではすっかりいなくなった。支持はほぼ得られない」と話した。