【1月13日 AFP】イスラエルは12日、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)で「ジェノサイド(集団殺害)」を行っているとして国際司法裁判所(ICJ)に提訴された訴訟で、パレスチナ人を滅ぼすつもりはなく、提訴内容は事実を「著しく歪曲(わいきょく)」し、「悪意」があると反論した。

 イスラエルは、第2次世界大戦(World War II)中のナチス・ドイツ(Nazi)によるホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)を受けて1948年に国連総会(UN General Assembly)で採択された集団殺害罪の防止および処罰に関する条約(ジェノサイド条約)に違反したとして、南アフリカからオランダ・ハーグ(The Hague)のICJに提訴されている。

 イスラエル側の弁護団長を務めるタル・ベッカー(Tal Becker)氏は、南アは「遺憾ながら、事実や法的状況を著しく歪曲した内容をICJに提出した」と主張。

 裁判官らの前で動画や写真を使って、昨年10月7日のイスラム組織ハマス(Hamas)による攻撃の恐怖を生々しく描写し、ハマスの戦闘員は「親の前で子どもを、子どもの前で親を拷問し、人々を焼いた。組織的にレイプを行い、四肢を切断した」と述べた。

 さらに、イスラエルの対応は自衛であり、ガザに住むパレスチナ人を対象としたものではないと強調し、「イスラエルが行っているのは防衛戦争で、相手はパレスチナ人ではなく、ハマスだ」と主張。

「このような状況において、イスラエルがジェノサイドを行っていると提訴することほど虚偽と悪意に満ちた申し立てはない」と訴えた。

 イスラエルのみならず同盟国の米国も、南アの主張は事実無根だとし、裁判での徹底抗戦を表明している。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は11日、「イスラエルはジェノサイドと戦っているさなかに、ジェノサイドで訴えられている」と主張。「ユダヤ人に対してホロコースト以来最悪の犯罪を実行したテロ組織(ハマス)を、今度はホロコーストの名の下に擁護する者がいるとは、なんと厚かましい。世界はめちゃくちゃだ」と述べた。

 米国務省のマシュー・ミラー(Matthew Miller)報道官は、南アの提訴内容は「事実無根だ」と述べた。

 ICJは南アの要請に応じて数週間以内に判決を下す可能性が高い。ICJの判決は終局判決で法的拘束力があるが、執行力はほとんどない。

 ICJはロシアのウクライナ侵攻から1か月後、ロシアに軍事作戦の停止を命じる判決を下したが、効果はなかった。(c)AFP