■貴重な水

 一家は、かつて自分たちの住まいだった場所に積もるがれきの中でこの日を過ごした。

 そこへ小麦粉の入った小さな袋をトロフィーのように掲げて、義理の妹のネスリンさん(39)が現れた。2人はすぐに仕事に取り掛かった。小麦粉と水を混ぜ、一人が生地を練り、もう一人ががれきの中から段ボールやまきを探し出し、平たいパンを焼くための火をおこした。

「見て!私もお手伝いしてるよ」と叫んだ9歳のビラルちゃんは、むきだしとなったコンクリートの上に洗濯物を広げていた。

 水もわずかしか手に入らない。洗濯用、シャワー用と少しずつ慎重に使わなければならない。

「洗濯は4、5日おき。水がなくて、もっと間があくこともある」。ロバヤさんはがれきの中に残ったバスルームを指さしながら言った。「でも、コンクリートの破片が頭に落ちてこないか、気が気ではない」

 夫のイメドさんは子どもたちを退屈させないようにアラブの伝統的な笛「ネイ」で、パレスチナの古い歌や今風の曲を吹いている。

■何よりも子どもたちに

「ウード(弦楽器)はがれきの下に埋もれてしまったが、少なくとも笛があれば元気が出るし、子どもたちを笑顔にできる」とAFPに語った。

 午後までに一家は27リットルの水、500グラム入りのパスタ袋、ソースの入ったパックを確保することができた。

「まず、子どもたちに食べさせる」とイメドさん。子どもや孫たちが皿を持って並び、何口か食べるとすぐになくなってしまった。

 食後、両親は自分たちに一杯ずつお茶をいれた。粉茶は残りわずかなので節約しなければならない。

 ドローンの音が大きくなり、暗闇が迫る中、一家は国連の学校へ戻った。「毎日、前の晩より少しずつ寒くなっているのに、子どもたちの防寒着がない」とロバヤさんは嘆く。

「子どもたちはあまり眠らない。眠れたとしても、夜中に悲鳴を上げながら目を覚ます」とネスリンさんは話す。「だから、私は家の近くへ帰れる日の出を待って夜を過ごしている」 (c)AFP/Mai Yaghi