■「全てが破壊されていた」

 1週間後、荷物を取りに行くためにワディシーク村への帰還が許された。

 村の指導者であるバシャールさんは「全てが破壊されていた。動物の餌もまき散らされていた」とAFPに説明した。

 AFP取材班も、荒らされた家々を目の当たりにした。たんすは空っぽになり、子どもたちのベッドも破壊されていた。カーテンは引き裂かれ、紙くずやサンダル、おもちゃなどが床に散乱していた。

 村内と周辺では、入植者が乗る車両がうろついていた。一部はイスラエルの旗を掲げていた。

 バシャールさんは「私たちを追い出して、土地を奪取するための長期的な計画だ。ガザでの衝突に注意が向いているうちに進めようと思ったのだろう」と話した。

 イスラエルの人権活動家ガイ・ハーシュフェルドさんもバシャールさんと同じ見方を示す。

「入植者はこの衝突を好機とみて、『C地域』からユダヤ人以外を全て追い出そうとしている」

 ハーシュフェルドさんが言う「C地域」とは、イスラエル軍が全権を持つ被占領地を指し、西岸の60%に及ぶ。

 実際のところ、入植者たちの行動はイスラエル社会でもあまり良くは思われていない。それでも、右派のベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)政権からは強力な支持が得られている。

 西岸にはイスラエル兵が多数配置されているものの「軍は入植者による暴力に対しては介入しない」と、人道支援の調整を行うNGO「ヨルダン川西岸保護コンソーシアム(West Bank Protection Consortium)」のアレグラ・パチェコ(Allegra Pacheco)代表は話す。

「イスラエル兵の存在により、さらなる暴力行為につながることが多い」 (c)AFP/Chloe ROUVEYROLLES-BAZIRE