■少女が運び屋に

 顧客は血液サンプルを深セン(Shenzhen)に送り、血液はそこから境界線を越えて香港に密輸される。代理店は具体的な輸送手段を明らかにしなかったが、目的地には必ず届くと請け合った。

「血液サンプルは指定された輸送手段を使って検査施設に運ばれる。失敗することはない」と、ある代理店は語った。結果は営業日1日以内に送付されるという。

 人を使って検体を運ぶ代理店もある。2月には深センと香港の境界付近で、香港に向かっていた12歳の少女が当局に捕まった。少女の背中のリュックサックには、妊婦の血液サンプルが入った試験管142本が入っていた。

 検査では、妊婦の血液に含まれる少量の胎児のDNAを分析してY染色体の有無を検出する他、ダウン症候群のような染色体異常を調べることもできる。医師が超音波を使って胎児の外性器を確認するよりも数週間早く、正確に胎児の性別を判別できるケースが多いという。

 妻が血液検査を受けているというある中国人男性(39)が、香港・九龍(Kowloon)の検査機関近くでAFPの取材に応じた。「既に娘が3人いるので息子が欲しい」と話す。有力者とのコネがあるか経済的に豊かな人々の多くは一人っ子政策を逃れた。この男性もその一人だ。男性は、男児の跡取りを望む親の圧力が激しかったため、南部・貴州(Guizhou)省から香港まで来た。おなかにいるのが女の子だと分かった場合は、中国本土で中絶しようと夫婦で決めているという。