【4月11日 東方新報】上海市の東華大学(Donghua University)の研究グループが、チップやバッテリーに頼らずに発光表示やタッチ操作などの人と機械のインタラクション(相互作用)の機能を実現できる新しいタイプの「スマートファイバー」を開発に成功した。

 この研究は5日、米科学情報誌「サイエンス(Science)」に掲載され、人間とそれを取り巻く環境との相互作用の仕組みを変える新たな可能性を提供するものだと評価された。

 同誌は、布地に電子部品を組み込むことは、通常では、硬いバッテリーやチップを必要とするため、困難であると指摘している。これに対しこの研究論文の著者は、幾つかの簡単な例を挙げ、ワイヤレス・デジタル・インタラクションの実現可能性を示した。

 この研究では、人体をエネルギー相互作用の導管として利用することを提案している。この原理は、「人体カップリング」として知られる電磁波と体内電流の相互作用の新しいエネルギーメカニズムを発展させるものだ。特定の機能性材料を繊維に加えることで、その繊維は「タッチ・コントロール」「布上の発光ディスプレイ」「ワイヤレス・コマンド送信」などの機能を実現する。

 東華大学の先端機能材料研究グループは5年ほど前から、発光ファイバー材料の分野に注力してきた。そしてある実験の時に、ファイバーが電波を当てると発光することを偶然発見した。

 これに基づいて、身の回りの密度の低いエネルギーを収穫して電気エネルギーに変換する「エネルギーハーベスティング」「情報センシング」「伝送」などの機能を1本のファイバーに統合した「非ノイマン・アーキテクチャ」の新しいタイプの「スマートファイバー」を提案したという。

 この新しいタイプの繊維は、快適さと安定性も兼ね備えているという。研究グループは「テストを通じてこの繊維は肌にも優しいことが分かった。2年間の安定性と実用性のテストの結果、この繊維は比較的安定していた」と説明した。

 この研究グループは将来的に、スマートフォンのようにインテリジェントで着心地が良い「スマートファイバー」を使った衣服の製造を目指しているという。しかし、信号の干渉や繊維の耐久性・安定性など、製品が販売されるまでにはまだ乗り越えなければならない壁があるとのことだ。(c)東方新報/AFPBB News