【6月9日 東方新報】中国初の国産大型ジェット旅客機C919の商用運航が始まった。記念すべき第1便、中国東方航空(China Eastern Airline)MU9191便は、5月28日午前11時前、約130人を乗せて上海虹橋国際空港(Shanghai Hongqiao International Airport)から飛び立ち、約2時間のフライトを終え北京市首都国際空港(Beijing Capital Airport)に着陸し、歓迎の放水アーチで迎えられた。上海―北京便に続き、翌29日には上海―成都(Chengdu)便にもC919が就航した。

 この日を多くの関係者が感慨をもって迎えたことだろう。C919の座席数は158〜192席、航続距離は4075〜5555キロという。現在は大型旅客機市場をほぼ独占している米ボーイング(Boeing)と欧州エアバス(Airbus)の牙城をゆくゆくは切り崩したいところだ。

 C919の開発が国家プロジェクトとして始まったのは16年前、2007年にさかのぼる。国営の航空機メーカー中国商用飛機(COMAC)が開発・建造にあたり、2017年には試作機の初フライトを成功させた。多くの国民が国産旅客機にいつか乗ってみたいと期待を寄せる中、2021年3月には、中国東方航空が5機の購入を正式に契約。C919が中国民用航空局から機種の安全性を示す「型号合格証(型式証明)」を取得したのは、それから1年以上経った2022年9月だった。

 2022年12月には、中国商用飛機から東方航空に第1号機の鍵を引き渡すセレモニーがあった。関係者たちには、それが納品される飛行機の鍵のみならず、国産旅客機の新たな市場の扉を開くための鍵であり、中国の民間機産業の発展の道を開く鍵にも見えたはずだ。

 国産旅客機を託された東方航空は100時間に及ぶテスト飛行を重ね、C919専門の客室部や修理コントロールセンターなどを設立し、万全の体制で商用運航の初フライトに臨んだ。

 上海から北京に飛んだ商用第1便の機体には、印章をイメージさせるデザインの漢字で「全球首架(世界第一)」とペイントされ、英語でThe World’s First C919と併記されている。

 座席はビジネス8席、エコノミー156席の計164席で、シートも国産品。ビジネス席は背もたれを120度まで傾けられる。エコノミー席は通路を挟んで左右3席ずつの配置だが、通路の天井は高さが2.25メートルあり空間に余裕を感じさせるデザインになっている。

 20台の吊り下げ式モニターに流れる離陸時の安全ビデオは、中国要素を取り入れたC919専用版。機内食も特別で、その名も「五福臨門(あらゆる福がやって来る)」。燻製(くんせい)肉の炊き込みご飯、マンゴープリン、チョコレートクッキー、3種の果物と中国ブランド大白兎(White Rabbit)の牛乳パックと豪華でお祝いムード満載だ。

 C919が開発から今日の商業運航までに歩んだ月日は、中国が経済力や技術力で世界に存在感を示してきた時期と重なる。目覚ましい進歩を見せる有人宇宙飛行計画や深海探査技術などと共に、C919は中国の国力と科学技術力の高さの象徴として捉えられてきた。それだけに客を乗せて飛ぶC919の勇姿に誇らしさを重ねた人も多かったことだろう。(c)東方新報/AFPBB News