【9月23日 東方新報】最近、在日中国人の研究が日本で重要な学問のテーマとなっている。東京都庁が発表した最新の人口調査によると、現在23区内に居住する外国人の総数は61万2000人、そのうち中国内地(大陸)から来た人の数は24万2000人で、ほぼ4割を占める。2位の韓国やベトナムとは大きな差がある。

 中国人の数が直近5年間で激増していること以外にも、その人たちの年齢層、居住地区、日本での生活様式の変化など、全てのことに日本のメディアは強い関心を持っている。

 東京都とそれを囲む埼玉、千葉、神奈川の3県は、まとめて「一都三県」とも呼ばれ、首都を中心とした中核エリアという意味で「首都圏」とも呼ばれている。

 首都圏の三つの県は東京の中心地帯の23区からさほど遠くはないが、不動産価格は東京都に比べ明らかに安い。それゆえ、かなり前からこの3県は東京で働く中国人の多くが住むホットなエリアだった。

 特に埼玉県の東南部に位置する川口市は23区から近く、2~3万人の中国人が集まり、「西川口中国城」というニックネームが生まれたほどだった。

 ところが、最近5年間でこの状況が変化した。川口市の中国人の人口増加は14.8パーセントだが、東京都の23区内の増加率の方がもっと大きい。その中でも特に中央区、千代田区、文京区などの増加率は50パーセントを超え、新しい「一等地」になっている。

 これまでの数年間は、東京都の東南部に位置する江東区の中国人人口が最も多かった。これに僅差で追随するのが新宿区、足立区、江戸川区だった。

 中国経済圏の事情に詳しいジャーナリストの中島恵(Kei Nakajima)氏は江東区を評して、二つの違った顔を持つ「包容力と二面性共存」の区だと言う。

 同氏は、亀戸一帯の小規模店舗が立ち並ぶ下町情緒あふれる地域と、豊洲一帯の高層ビルやマンションが林立する現代的でビジネスの息吹が感じられる地域が共存するのが江東区の特徴だと指摘する。それゆえ、さまざまな階層の人たちが自身が求める生活を得られるのが人気の理由だという。

 中でも豊洲一帯は、中国人の中産階級の増加が特に著しい。かつて中国の財政経済専門メディア「財新(Caixin)」の日本人記者だった舛友雄大(Takehiro Masutomo)氏が、日本の経済雑誌「東洋経済」の9月9日の特集記事で、豊洲一帯の人気急騰の理由を興味深く分析している。

 彼は「東京都で一番の一等地とされる港区と比べ、豊洲のビルの密集度は低く、窓からの視野は広く開けている。また東京の大半の地区と比較して、豊洲の道路は格段に広く、『北京の雰囲気を思い出させる』からだ」と指摘している。

 相対的に豊洲は不動産価格が安めだ。今売り出し中の東急不動産の高級マンションブランド「ブランズ(BRANZ)」シリーズの「ブランズタワー豊洲(BRANZ TOWER TOYOSU)」の売り出し価格は、日本円で平方メートル当たり120万円だが、この価格は「北京の6割程度」に過ぎないという。

 ところが、一家を上げて日本に引っ越してきた中国の大都市の中産階級は、東京の不動産価格が本国に比べて安いので不動産の売買でもうけようという考えは持っていないらしい。彼らの主な動機は実は「教育」なのだ。

 居留ビザの分類から見ると、現在日本に住む中国人の身分はどんどん高級化し、滞在期間はどんどん長くなっている。日本の入国管理局の統計によれば、在日中国人の人数は過去7年間で6万5000人増加した。そのうち普通の就業ビザと留学ビザも増えたが、高級人材、経営者、永住者のビザは顕著に増加したという。

 現在、東京23区に家族連れで住んでいる中国人は、夫婦ともに日本の会社か多国籍企業のような勤務先で働く人たち、あるいは日本で自分の会社を経営している人たちが多い。

 そして、一部の中産階級の夫婦は子どもを国際学校に通わせている。国際学校の1年間の学費は日本円で250万円程度だ。これは北京市や上海市に比べて安い。

「アメリカンスクール・イン・ジャパン(ASIJ)」「ブリティッシュ・スクール・イン・東京(BST)」「西町インターナショナルスクール(NIS)」「清泉インターナショナルスクール(SIS)」「セント・メリーズ・インターナショナルスクール(SMIS)」、これらが在日中国人の関心度が高い国際学校だ。

 国際学校に通わせようとしない中国人家庭の場合も、それぞれ子どもが勉学に励むようにさせる自分流の方法を持っている。例えば、彼らは「サピックス小学部(SAPIX)」のような有名な進学教室に通わせる。日本の名門私立中学や、大学までの一貫校に順調に入学できるよう子どもの尻をたたいて勉強させるためだ。

 面白いのは、長く日本に住む中産階級の夫婦は今や流ちょうな日本語を話す必要もないことだ。なぜなら彼らは職場でも子どもの将来計画においても、英語の方がより重要な言葉だからだ。

 また、彼らの中では日本人と付き合いたいという意識も以前ほど強くはない。日本社会に溶け込む必要がないという人たちまでいる。数年前、東京に住む中国人が激増した頃に「由緒正しい正統中華料理」というワードが話題にのぼった。それ以降はメニューが全て中国語の店も容易に見つかるようになった。

 千葉県や神奈川県に住む中国人の農家で、在日中国人向けの団体購入の仕組みを作り、質が良く割安な野菜を提供しているところもある。日本で簡単には手に入らない「故郷の味」の食材を食べてもらおうという取り組みだ。

 日本の分析者の観点からは、中国人家庭の東京への移転は、中国経済の実力の増大の結果であり、今や日中両国の大都市の生活には高い類似性が出てきているという事実が感じられるであろう。

 一方、在日中国人にとっては、このような中産階級家庭の出現は「次世代の新たな華僑時代の幕開け」を意味しているのではないだろうか。(c)東方新報/AFPBB News