【3月7日 AFP】新型コロナウイルスワクチンを自発的に217回接種したドイツ人男性(62)が、副反応は全くなかったと報告したとする研究結果が医学誌「ランセット感染症ジャーナル(Lancet Infectious Diseases)」に掲載された。

 男性の免疫機能にも異常はないという。ただし、ドイツ主導の研究チームは、この一つの事例から一般的な結論を導かないようにと警告している。

 研究チームが同国中部マクデブルク(Magdeburg)に住むこの男性に注目したのは、2022年の報道がきっかけだった。男性は当時、新型コロナワクチンの接種を90回受けていた。

 当時の報道によると、男性は接種証明書を入手・改ざんして接種を希望しない人々に販売する目的で、医学的アドバイスに反して過剰に接種を受けたと疑いをかけられた。今週発表された論文によると、マクデブルクの検察が詐欺の容疑で捜査したが、不起訴処分とした。

 検察は、男性が9か月間に130回の接種を受けた証拠を集めた。だが、本人は2年5か月の間に、mRNAワクチンの変異株対応版を含む8種類のワクチンを計217回接種したと主張している。

 論文の共著者を務めた独エアランゲンニュルンベルク大学(University of Erlangen-Nuremberg)のウイルス学者キリアン・ショーバー(Kilian Schober)氏は、この男性に連絡しワクチンを多数回接種した場合の効果を調べる検査を申し出たところ、男性はさまざまな検査を受けることに「強い関心を示した」と説明した。

■過剰ワクチン接種

 研究チームはいわゆる「過剰ワクチン接種」について調査する極めてまれな機会を得ることになった。

 研究者からは、ワクチン接種をあまりに何度も繰り返すと免疫細胞が抗原に慣れてしまい、免疫機能が低下してしまうという声も上がっている。

 だが、このドイツ人男性の場合、免疫機能の低下は起きなかった。それどころか、新型コロナワクチンで推奨されている3回の接種を受けた対照群3人と比較したところ、男性の方が新型コロナに対する免疫細胞の量と抗体の量(抗体価)が「かなり高かった」という。

 さらに、217回目の接種でも、男性の抗体値は上昇した。

 男性は、217回の接種でワクチン関連の副反応は全くなかったと報告した。また新型コロナ検査での陽性反応も、過去に感染した痕跡もなかったという。

 ただし、研究チームは、この男性の経験から一般的な教訓を得ることは避けるべきだと警告。「言うまでもなく、過剰ワクチン接種は推奨しない」と述べた。(c)AFP/Daniel Lawler