【9月2日 AFP】オーストラリア人のリネーさん(35)は、フェイスブック(Facebook)の非公開マッチンググループに入っている。健康で冒険心と「子どもの心」を持つダンサーだと自己紹介しているが、最大のアピールポイントは「ワクチン未接種」であることだ。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)は収束しつつある。しかし、新型コロナワクチンでDNAが変異したり、不妊になったりするという科学的に否定されている偽情報を信じる独身の反ワクチン主義者たちは今も、マッチングサイトなどを通して同様の志を持った相手との出会いを探している。

 これは、コロナワクチンが世界で数千万人の命を救ったという科学的主張を故意に否定・無視する人にとって、反ワクチンがアイデンティティーとして確立されたことを示している。

 デート相手のワクチン接種の有無が気になっているのはリネーさんだけではない。

 AFP記者が入ったあるフェイスブックの非公開グループでは、多くの人が「ワクチン未接種」であることをデート相手の第一条件に挙げていた。

 カナダ・アルバータ大学(University of Alberta)のティモシー・カウルフィールド(Timothy Caulfield)教授はAFPに、新型コロナの流行によって、予防接種の拒否という行為が、個人的な健康上の決定から「自分の売りを表現する」方法へと変化したことを示していると指摘した。

「科学の問題ではなくなり、反ワクチン主義者だということを示す価値観が重要になっている」

 米調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が2022年に行った調査では、マッチングサイトやアプリを利用する米国の成人の約半数が、相手のプロフィルに記載されているワクチン接種の有無を重視していると回答した。

 掲示板サイト「レディット(Reddit)」のマッチングアプリについて議論するスレッドには、ワクチン接種済みの人は「生物兵器」を持っているとするコメントが散見された。ワクチン接種済みの人が「スーパー変異株」を広めているという、科学的に否定されている主張のことを指しているとみられる。