■「映画のよう」

 軍隊経験はなかったが、「報酬が良いと聞いていたので軍隊入りを選んだ。そうしたかったわけではなく、状況がそうさせた」と話した。

 2か月にわたる基本訓練を受ける前に健康診断を受けた。

「私の場合は政府に雇われたが、民兵勢力に属するネパール人もいると聞いた」

 新兵のうち15人がネパール人だった。朝6時に起床し、訓練を始める。「射撃位置や塹壕(ざんごう)の掘り方、無人機の狙い方を学んだ」

 ただ「言葉が問題だった」と振り返る。「彼ら(ロシア人)の指示が理解できない。戦場ではそれが命取りになる」

 大半がロシア人で構成され、ネパール人は6人のシャルマの部隊はウクライナの前線に送り込まれたが、東部クピャンスク(Kupiansk)に到達する前に待ち伏せ攻撃に遭った。

爆発で隊員数人が死に、シャルマも手足に傷を負った。

「映画のようだった」

 数か月入院して治癒しかけた頃、在モスクワのネパール大使館に助けを求めた。

 前線には「とても戻ることはできなかった」と、シャルマは言った。「刑務所行きかネパールに帰るかのどちらかしかないと考え、国に帰る方のリスクを取った」

■「準備しても無駄」

 ネパールは市民が兵士として動員されるのを防ぐため、いかなる形であれロシアやウクライナで働くことを禁止している。

 これまでに少なくとも12人が、ロシアのために戦う要員を送り込んだとして逮捕されている。

 警察によれば、こうした人々はインドかアラブ首長国連邦(UAE)経由で派遣され、当局をだますため虚偽の申告をするよう指導される。

 ナラヤン・プラカシュ・サウド(NP Saud)外相はAFPに、「ネパールは非同盟と平和を信奉する国だ」と語った。

「わが国はロシアと協定を結んでおらず、派遣された人々の即時引き渡しを要求している」

 この件についてカトマンズのロシア大使館にコメントを求めたが、返答は得られなかった。

 ロシアの病院のベッド上からAFPの電話取材に応じた、負傷したあるネパール人(27)は、同郷人に向け、誘惑に屈しないよう警告した。

「どれだけ準備しようと、爆弾を落とされたり無人機攻撃を受けたりしたら役に立たない。来るな、と伝えたい」 (敬称略)(c)AFP/Paavan MATHEMA