■魅力的な報酬

 外務省は、ウクライナでネパール人少なくとも12人が死亡し、5人が捕虜になっているとしている。

 戦場から戻ったネパール兵たちは、実際の死者数はやはりさらに多いと言う。国内メディアによれば、ウクライナ軍に従軍しているネパール人もいる。

 ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は傭兵を募るため、1か月当たり最大2200米ドル(約33万円)の報酬に加え、就労が可能になる市民権の付与を提示している。

 世界銀行(World Bank)によればネパールの1人当たり国内総生産(GDP)は1300ドル(約20万円)強と、アジアで最も低い部類に属する。一部の人にとっては魅力的な提案に映る。

 動画アプリ「ティックトック」で、ロシアでネパール出身の新兵が訓練を受けている動画を見て、一人の元兵士が昨年7月、傭兵登録した。

 違法のため匿名を希望した39歳のその元兵士はAFPに対し、「これは戦争だ。われわれはリスクを取ろうとしている」と話した。

 元兵士はネパール軍に10年超服務した後、中東ドバイの警察でも勤務経験がある。ウクライナでは6か月間従軍し、約1万5000ドル(約225万円)を手にした。負傷したため帰国せざるを得ず、稼いだ金は家を建てるために使っている。

「ネパール国内に良い働き口があれば誰も行かないだろう」と語った。

 シャルマの足には金属片が入り込んでいる。1足ごとに強烈な痛みが走る。ネパール人の代理人にだまされたと言う。

 毎年、国外での就労を目指すネパール人は数十万人に上る。公式な数字は40万人となっているが、違法就労も多い。大勢が渡航手続きを手伝ってもらうため数千ドルを代理人に支払っている。

 シャルマは借金をして学生ビザでロシアに渡った。だが労働許可が下りず、見つけた仕事は戦うことだけだった。

「借金の返済があったため、送金はできなかった」と、ネパールの首都カトマンズの貸部屋で言った。