【2月10日 AFP】陸上女子800メートルで五輪2連覇を果たしたキャスター・セメンヤ(Caster Semenya、南アフリカ)は9日、男性ホルモンのテストステロン(testosterone)値が高い女子選手は薬で数値を下げなくてはならないとするワールドアスレティックス(World Athletics、世界陸連)の規定撤回を求めている問題で、法廷闘争に必要な資金提供を募った。

 セメンヤは昨年7月、この問題に関する欧州人権裁判所(ECHR)への提訴でスイス・ローザンヌ(Lausanne)に拠点を置くスポーツ仲裁裁判所(CAS)からの人権侵害があったとする判決を勝ち取った。

 しかし、スイス当局は世界陸連からの支援を受け、判決に最終的な拘束力を持つECHRの大法廷にこの事案を持ち込み、5月15日に審理が開始されることになっている。

 南アフリカのヨハネスブルクで会見を開いたセメンヤは、「この裁判では多くの専門家に報酬を支払う必要があり、そのための資金が不足している」と明かし、「どのような協力も大きな違いになる」と支援を求めた。

 プロボノとして活動するセメンヤの担当弁護士によると、ECHRの大法廷での審理にかかる費用だけで約18万ドル(約2700万円)になる見通しで、ここまで10年間にも及んでいる法廷闘争では、主に専門家やスイスやその他の国で裁判を行う資格を持つ弁護士への費用で総額150万ドル(約2億2400万円)がかかっているという。

 世界陸連は2018年、400メートルから1マイル(約1600メートル)の種目を対象に、セメンヤら「体の性のさまざまな発達状態(性分化疾患、DSD)」を持つ選手の出場を制限する規定を導入した。

 セメンヤはそれ以降、テストステロン値を下げる薬の接種を拒否しており、その結果として得意種目の800メートルへの出場が禁止されているほか、転向を余儀なくされた5000メートルでも結果を出せない状況が続いている。(c)AFP