【7月12日 AFP】陸上女子800メートルで五輪2連覇を果たしたキャスター・セメンヤ(Caster Semenya、南アフリカ)が、男性ホルモンのテストステロン(testosterone)値が高い女子選手は薬で数値を下げなくてはならないとするワールドアスレティックス(World Athletics、世界陸連)の規定撤回を求めている問題で、欧州人権裁判所(ECHR)は11日、スイスの裁判所によるセメンヤ側に対する人権侵害があったとする判決を下した。

【特集】キャスター・セメンヤをめぐる「性別」問題

 32歳のセメンヤは、この問題に関してローザンヌ(Lausanne)に拠点を置くスポーツ仲裁裁判所(CAS)とスイス連邦最高裁で敗訴し、ECHRに提訴していた。

 ECHRは判決の中で、「(セメンヤに)訴えを効果的に審査してもらうための十分な制度的、手続き的な保護が与えられていなかった」と指摘した。

 世界陸連は2018年、公平な競技環境をつくるとして、400メートルから1マイル(約1600メートル)の種目を対象に、セメンヤら「体の性のさまざまな発達状態(性分化疾患、DSD)」を持つ選手の出場を制限する規定を導入した(今年3月に対象は全種目へ拡大した)。セメンヤは同規定に従うことを拒否し、結果として、得意種目の800メートルに出られない状況が続いている。

 ただし、今回の判決は世界陸連の規定に疑問を投げかけたり、セメンヤの800メートルでの競技復帰を可能にしたりするものではなく、あくまで象徴的な意味合いが強い。(c)AFP