■プーチン氏には「共感力がまったくない」

 ボルナ氏の政治的姿勢と仲間からの尊敬は、ロシアの国籍を越えて、ウクライナ人患者の信頼を勝ち取っている。

 ウクライナ南東部の港湾都市マリウポリ(Mariupol)の包囲戦で脚を引きちぎられた兵士ミコラさん(35)は、ボルナ氏の誠実さと医療技術の両方に信頼を寄せていると語った。

 ボルナ氏と10年来の友人で、ウクライナでの労働許可取得を支援した外科部長のペトロ・ニキーチン氏(61)は「ボルナ氏はここに着いた途端、真っすぐ手術室へ向かった」と振り返った。

 自国の大統領が起こした破滅的な紛争の犠牲者を自分が救おうとしている状況に、ボルナ氏は何とも言えない思いでいる。「私にはプーチン氏が理解できない。同氏には共感力がまったくない」

 だが、戦争に突き進むプーチン氏を止められなかったロシア人には連帯責任があり、それは残りの人生すべてをかけて背負っていくものだとボルナ氏は言う。「私は59年間ロシアに住んでいた。ロシアのためにできることはすべてやった」

「ロシアは欧州の道を進むべきだと私は思ったが、ロシアが選んだのはファシストの道だった。それは私のためにも、家族のためにもならない」

 映像は1月27日に撮影。(c)AFP/Jonathan BROWN