■アカデミーが目指す「成功」とは

 しかし、生徒がアカデミーで学ぶのはテニスだけではない。室内および屋外のテニスコートが計40面以上ある施設内には、大学進学に向けた勉強や準備ができるインターナショナルスクールもある。

 アカデミーのメンバーは、スイミングプールやパデルコート、サッカー用のピッチも使用することができる。アカデミーが目指すのは、テニス選手の輩出だけでなく「最高の人間を育成する」こと。14歳から18歳までのジュニア選手を担当しているフランス人コーチのジェレミー・パイザン氏は、「最も重要なのは、私たちが伝える価値感だ」と話す。

「私はキャリアの中で、苦しむことを学んだ」「自分は常に目標を持っている。選手として、また一人の人間として成長することだ」。施設内のあらゆる場所には、モチベーションを高めるこうしたナダルの言葉が飾られ、ナダルのこれまでの功績を紹介する博物館もある。

 ナダルが成功した要因について、トニ氏は何よりも本人の忍耐と懸命な努力が大きいと考えている。

「自分は良いコーチだと自負しているが、王者になる方法は知らない。だから若者たちには『コーチを信じるのではなく、自分自身を信じろ』と伝えている」というトニ氏。「最も努力した人が、成功の最大のチャンスをつかむ。だから、自分が他の人より努力していくことだ」と話した。

 輝かしいキャリアを築き上げてきたナダルだが、アカデミーにおける成功の捉え方は異なる。

「キャスパー・ルードやフェリックス(・オジェ・アリアシム<Felix Auger-Aliassime、カナダ>)が(アカデミーに)いることが成功ではない。成功とは、誰もが自分自身のベストを尽くすことだ」とトニ氏。

「成功とは、ここに来る子どもたち全員が自分の時間を最大限に活用し、ここを去るときには、結果を出したかどうかにかかわらず、自分の時間は無駄ではなかったと感じてくれることだ」と語った。 (c)AFP/ Gabriel RUBIO GIRON