【12月20日 AFP】フランスの裁判所は19日、高齢夫婦が150ユーロ(約2万4000円)で骨董(こっとう)商に売却したアフリカの仮面が、競売で420万ユーロ(約6億6000万円)で落札されたため売却の取り消しを求めていた裁判で、夫婦の軽率さが原因だとして訴えを退けた。

 80代の夫婦は2021年9月、南仏の別宅に保管されていた仮面を処分するため、アフリカで作られたやりや割礼用のナイフなどと共に売却した。

 これらはアフリカで総督を務めていた先祖が所有していた物で、さほど価値はないと考えていた。

 夫婦は仮面を150ユーロで売却した。しかし、2022年3月に南仏モンペリエ (Montpellier)で行われた競売では420万ユーロで落札された。落札者の身元は明らかになっていない。

 競売会社は、仮面は「19世紀にガボンの少数民族ファン(Fang)の秘密結社が儀式で使っていた極めて希少なもの」で、同様の物は10個ほどしか現存していないとしている。

 競売のことを知った夫婦は直ちに、「鑑定ミス」があったとして150ユーロでの売却の取り消しを求めて訴えた。また、仮面を買った骨董商は最初から「仮面の真の価値に気付いていた」と主張した。

 だが裁判所は、夫婦は売却前に仮面の評価額を知るための努力を一切しなかったと指摘。夫婦の「言い訳できない怠慢と軽率さ」が原因だとの判断を下した。

 また、骨董商自身もアフリカ美術の専門家ではなく、夫婦を欺いた訳ではないとしている。

 骨董商は、競売の開始価格と同じ30万ユーロ(約4700万円)を示談金として提示したが、夫婦の子どもらが訴訟を優先するとして、拒否していた。

 夫婦の代理人弁護士は、控訴を検討していると話した。

 仮面をめぐっては、ガボン政府も競売の取り消しと仮面の返還を求め訴えていたが、裁判所はこの訴えも退けた。(c)AFP/Ysis PERCQ with Juliette RABAT in Marseilles