【12月22日 AFP】ロシアではウクライナ侵攻開始以降、急激に保守化が進み、国民の暮らしも変化した。影響が及んでいる問題の一つが、女性の中絶権だ。

 宗教色のより強い多くの西側諸国とは違い、ロシアでは何十年も前から中絶は合法で、この問題で社会が分裂することもあまりなかった。だがここ数か月で雲行きが変化している。

 各地ではロシア正教会の要求に屈し、民間クリニックでの中絶を規制しようとする動きが相次いでいる。一方、国営クリニックを運営する保健当局は政府の方針を強化し、女性たちに中絶を思いとどまらせようとしている。

 当局は出生率の向上が目的だとしているが、権利運動家たちはウクライナ侵攻後の広範な弾圧の一環だとみている。

 ジョージアに亡命中のフェミニスト活動家、レダ・ガリーナ(Leda Garina)氏は「戦争中の国家には、この種の法律が常につきまとう」と指摘した。今回の措置はロシア人女性に対し、「家にいて、もっと兵士を産め」という明確なメッセージだとAFPに語った。

 中絶をめぐり、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領(71)は先週、禁止には反対するものの、中絶は国益に反すると発言。人口問題を解決するために、女性には「子どもの命を守ってほしい」と訴えた。

 1990年代以降、人口減少が急速に進む中、プーチン氏は出産を促すための経済的奨励策を掲げてきた。だがウクライナ侵攻以降、そこに新たな意味が生まれた。