■金製品を切り売り

 西岸のパレスチナ人労働者は、イスラエル政府が自国の労働者に適用している社会保険や失業手当を受給できない。パレスチナ自治政府も、そうした制度を設けていない。そのため、失業者の生活は自助努力に掛かっている。

 失業中で、家族・親戚など10人の大黒柱であるタリク・ハラハラさんは「子どもたちに食べさせるため、妻が金製品を持っている人はそれを売り払っている」と話した。

 失業中の建設作業員ジャミル・シアッラさんは、「将来が見通せない。精神的にまいっており、貯金もない」と嘆いた。

■「希望がない」

 悪影響は地元経済にも及んでいる。

 ハラスでスーパーマーケットを経営しているアフマド・ラドワンさんは、売り上げが70%減少し、顧客のつけが累計で売り上げの40%に達したため、後払いでの食料品販売をやめた。

 ラドワンさんは「人々は牛乳や米、砂糖、小麦粉といった基本的なものしか買わなくなった。パンも今では半分しか買ってくれない」と明かした。

 ラドワンさんは6人いた従業員の半分を解雇し、今月中にさらに2人を解雇する予定だ。「希望はない」と言う。

 イスラエル軍は西岸にも定期的に侵攻しており、情勢は悪化している。

 パレスチナ自治政府によれば、ガザでの戦闘が始まって以降、西岸ではイスラエル軍やユダヤ人入植者によって約270人の住民が殺害された。

 自治政府経済省によると、イスラエル軍が西岸に約130か所の常設および移動検問所を設置したため、パレスチナ人は極めて危険な裏道の利用を余儀なくされ、入植者の襲撃を受ける危険が高まっている。

 地元住民は、そうした検問所によって農産物の輸送や労働者の移動が妨げられ、経済は一段と大きな打撃を受けていると話した。(c)AFP/Majeda EL-BATSH