【12月30日 AFP】気候変動危機(の深刻化)、核のアルマゲドン(世界最終戦争)、あるいは突然の隕石(いんせき)の衝突──。そのようなリスクを考えると、人類は「地球B」で生き延びることも選択肢に入れる必要があるのは明らかだ。しかし、オランダの起業家、エグバート・エーデルブルック(Egbert Edelbroek)氏は、それにはまず宇宙空間における安全な生殖を可能にする必要があると語る。

 エーデルブルック氏が立ち上げた企業「スペースボーン・ユナイテッド(Spaceborn United)」は、宇宙空間における生殖研究のパイオニアだ。同社は火星の「低重力」環境の下での自然妊娠と出産を可能にすることを最終目標に掲げている。

 宇宙空間における安全な生殖を実現させるためには、まだクリアすべき課題が山ほど残っている。だがエーデルブルック氏は、自身が生きている間に、人類による地球外での出産を目にすることができると確信している。

 AFPの取材に応じた同氏は「人類が地球以外の惑星にも生息する種となることが重要だ」と話し、「地球外に人類の居住場所をつくり、そこを完全に自立可能なものとしたいなら、生殖をめぐる問題を克服する必要がある」と続ける。

 実際のところ、宇宙空間における性行為にはいくつもの困難が伴う。第一には、重力がないことが挙げられる。重力の欠如により相手からふわふわと離れてしまうだろう。そこでスペースボーンはまず、「宇宙空間での胚培養」を試みようとしている。

 同社は精子と卵子を受精させるための円形の容器を開発した。まずはマウスの精子と卵子での受精を目指す。最終的には、ヒトの精子と卵子を用いる予定だ。

 この開発した容器については「精子・卵子のための宇宙基地」のようなものだと、プロジェクトの協力企業、英フロンティア・スペース・テクノロジーズ(Frontier Space Technologies)のアクイール・シャムスル(Aqeel Shamsul)最高経営責任者(CEO)は言う。

 受精卵は冷凍保存され、発育は一時的に止まる。これは、地球への再突入の際に受精卵を保護する目的も兼ねている。再突入では「強い衝撃、振動、強力な重力加速度を伴う」「受精卵をそうした環境にさらすわけにはいかない」と、エーデルブルック氏は説明した。

 現在は、研究室で低重力環境をつくり、シミュレーションを行っている。エーデルブルック氏によると、来年末にはマウスの精子と卵子を宇宙空間に打ち上げる計画で、「およそ5、6年」後には最初のヒト受精卵が用いられる予定という。