【6月18日 AFP】火星への滞在が子どもの頃からの夢だったわけではないが、カナダ人生物学者のケリー・ハストン(Kelly Haston)氏(52)は、その準備に貢献するためにこれからの1年間を充てることになった。

「実際にそこ(火星)に滞在していると想定して取り組む」。ハストン氏はAFPに、今月末に開始される米航空宇宙局(NASA)の火星滞在シミュレーション計画への参加に当たり、意気込みを語ってくれた。

 計画は「健康・パフォーマンス探査研究(CHAPEA)」と呼ばれ、3回にわたって行われる予定だ。

 CHAPEAは、米テキサス州ヒューストン(Houston)の宇宙センターに設置された実験施設で実施される。ハストン氏を含む4人のボランティア被験者が1年間、滞在する。施設は3Dプリンターを用いて造られた。

 実際の有人火星ミッションの前に、隔離された環境下で長期間を過ごす宇宙飛行士の行動について評価するのが狙いだ。

 NASAからは、実験では機器の動作不良、水利用の制限といった状況に遭遇することになると予告されたという。ハストン氏は、この他にも「突発的な事態」が待っていると話した。

 外界との交信では、地球・火星間と同様、遅延が生じる。相手にメッセージ(信号)が届くまでに最長20分かかる。返信を受け取るまでには40分を要することになる。

 実験施設は「マーズ・デューン・アルファ(Mars Dune Alpha)」と呼ばれ、160平方メートルほどの広さがある。寝室、ジム、共有スペース、「垂直菜園」などが備わっている。

「火星表面での歩行が体験できる屋外スペースもある」。「スペースウオーク」を行う際には宇宙服を着る必要があり、ハストン氏は「それが一番楽しみかもしれない」と話した。