■関係はすでに良好

 第1回目のCHAPEAには、ハストン氏の他、エンジニア、救急医、看護師が被験者として参加する。4人とも選定されるまで、面識はなかった。

 リーダーに任命されたハストン氏は「すでに良好な関係を築けている」と言う。1年間の実験を通じ、関係をさらに強めたいと語った。

 4人が臨むのは、人類にとって重要な探査に向けてのシミュレーションだ。ただ、実際に大きなカギを握るのは、掃除や食事の用意といった日常業務をこなす中でいかに協調性を保つことができるか、だ。

 負傷や急病の際には、施設を一時的に出ることができる。ただ、それ以外の大半の状況については、被験者のみで対処できるよう、さまざまなケースが想定されている。家族に問題が起きた場合、どのようにそれを伝えるかといったことも考慮されている。

■不安も

 ハストン氏にとって最も不安なのは、家族と離ればなれになることと、そうした状況にどうやってなじんでいくかという点だ。連絡手段は主にメールだ。ビデオ会話もたまにできるというが、リアルタイムではない。

 ハストン氏は不安に対処するため、これまでの経験を役立てるつもりだ。研究でアフリカ大陸を訪れた際には、数か月にわたって車やテントで寝泊まりした。5人のグループだった。

 そうした経験から、隔離される感覚には「慣れているはず」と話す。

 火星表面での滞在をシミュレートする実験は過去にも行われている。ただ、2015~16年にハワイで実施された実験は、NASAが主導したものではなかった。

 NASAは「アルテミス(Artemis)計画」で、有人宇宙船の月面着陸を目指している。同計画を通じて宇宙空間での長期滞在について知見を蓄積し、30年代後半までに火星への有人ミッションを実行する考えだ。(c)AFP/Lucie AUBOURG