■バス料金値上げへ

 国民はしかし、懸念を抱く一方で、ミレイ氏が選挙戦の際に大出力のチェーンソーを振りかざして予告していた、一連の「削減」を甘受する構えのようにも見える。

 三つの職を掛け持ちしているという大学生のカミラ・ヘイグさん(18)は、「生活はぎりぎりで、誰にとっても(削減は)困難が伴うだろう」と話した。

「何か月間かは大変な時を我慢して、いずれより良い国になると信じるしかない」

 首都ブエノスアイレスのある混み合ったバス停で、蒸し暑さの中、利用客は補助金によって乗車1回分52ペソ(約10円)に抑えられたバスを待っていた。

 アルゼンチンは、バスからスブテと呼ばれる地下鉄まで、広範囲かつ効率的な公共交通網を誇る。政府が来年1月から補助金を引き下げれば、利用者の懐は直撃を受ける。

 バス待ちの列に並んでいた郵便局員、セバスティアン・メディナさん(48)は、「値上げには腹が立つが、遅かれ早かれ起きるはずのことだった」と語った。

「料金は700ペソ(約125円)程度に上がるかもしれないと、インターネットで読んだ。発表はまだだが」

 今後数か月ついては、「私たちは危機にはもう慣れっこだが、今回のはこれまで以上に困難なものになるだろう」と予想。「希望を持たねば」と言った。

 やはりバスを待っていた自動車販売員のリアン・ヒメネスさん(27)も、バス料金値上げについて「国民への影響は大きい」としながら、新政権の対策には同意すると語った。「導入されるだろうということは私たちは分かっていた」