【12月13日 AFP】世界保健機関(WHO)は12日、パレスチナ自治区ガザ市(Gaza City)の病院に向かった救急車両の車列がイスラエル軍から長時間に及ぶ検問を何度も受け、患者1人が死亡し、同行していた医療従事者も拘束されて虐待を受けたと明らかにした。

 WHOは先週末、損壊の激しいアハリ(Al-Ahli)病院に車列を向かわせ、患者1500人分の手術器具を届けた。復路では、重体患者19人と同伴者14人を高度の治療を受けられるガザ地区南部のナセル医療複合施設(Nasser Medical Complex)に移送した。

 しかし、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長はX(旧ツイッター)で、「(イスラエル軍に)制止されて治療が遅れ、重傷患者1人が搬送中に死亡した」として、「医療従事者のチェックに時間をかけ、拘束時間を長引かせることで、重体患者の命が危険にさらされている事態を深く懸念している」と表明した。

 車列に同行していたWHOパレスチナ自治区代表リチャード・ピーパコーン(Richard Peeperkorn)氏も、ガザからリモートででスイス・ジュネーブでの会見に参加し、イスラエル軍の検問方法に警鐘を鳴らした。

 ピーパコーン氏によれば、アハリ病院を目指して北上する途中、ガザ渓谷(Wadi Gaza)検問所で最初に止められ、パレスチナ赤新月社(Palestinian Red Crescent)の職員2人が1時間以上拘束された。うち一人が銃を突きつけられ、ひざまずかされたという。

 拘束された職員の一人は、イスラエル軍に連行されて何時間も取り調べを受けた。ピーパーコーン氏いわく「悲惨な目」に遭い、「嫌がらせを受け、殴られ、脅され、制服を脱がされ、目隠しをされて後ろ手に縛られ、屈辱的な扱いを受けた」という。

 往路では銃撃も受けた他、復路でも車列を止められ、セキュリティーチェックと称してほぼ全員が降車を命じられたとされる。(c)AFP/Nina LARSON