【12月31日 AFP】パティシエに贈られる世界最高峰の賞に、女性として初めて輝いたニナ・メタイエ(Nina Metayer)さん(35)は、バターを控えるのを良しとはしない。

 メタイエさんはこのほど、国際パン職人・パティシエ連合(International Union of Bakers and Pastry Chefs)による「世界最優秀パティシエ(World Confectioner)」を受賞した。

 女性がこの賞を受賞するのは、92年の歴史で初めて。

 だが、メタイエさんは自らが制作するケーキにはやりや低脂肪を取り入れたりしない。

 メタイエさんはAFPの取材に応じ、「バター、グルテン、卵を使用したケーキが好き」と話した。「うそをついてはいけないという主義に基づいてケーキ作りをしている。人がケーキを食べるのは楽しみのためだ」

 良質で風味の良い素材を使えば、自然と砂糖の量を減らすことができるという。

 重要なのは正確さとちょっとした工夫で、とっぴなアイデアではないと指摘する。「これまで誰も作ったことがない、信じられないほど素晴らしいレシピを考えているわけではない」と言う。

「直観と、すべてを計量し、計算するミリ単位での正確さが鍵だ。最後の一かけらの味まで再現できるように、マイクロスケールを使っている」

■「ガラスの天井はない」

 パン職人として修行を積んだメタイエさんは15年前に独立した。フランスのブランジェリーは男性優位な業界で、参入は難しいと感じたからだ。

 パティシエへの転向は「それほど容易ではなかった」が、忍耐強く取り組んだ。ヤニック・アレノ(Yannick Alleno)氏やアマンディーヌ・シェニョ(Amandine Chaignot)氏ら一流シェフの営むミシュランガイド(Michelin Guide)の星獲得店で経験を積み、パティシエ最高峰の賞を受賞するまで至った。

 レストランガイド本「ゴ・エ・ミヨ(Gault et Millau)」のマルク・エスケール(Marc Esquerre)氏は、メタイエさんについて「現代の製菓のすべてを象徴し、業界全体をまさに前進させている」と評価した。

 メタイエさんは3年前、自身の事業を立ち上げるため、大規模な工業地帯に引っ越した。無駄を省き、顧客の要望に直接応えるためだという。

 メタイエさんは幼い娘2人とケーキを作る動画を投稿している。「女性シェフで実業家でも、幸せな家庭を築くこと」は可能だと伝えたいと話す。

 メタイエさん横では、スーフェス(副製菓長)のリュシー・マルタンピエラ(Lucie Martin-Pierrat)さん(30)が、マンゴーとパッションフルーツのパブロワとタルトタタンに仕上げを施していた。

 マルタンピエラさんは「女性シェフが率いる結束の強いチームの存在は、パティシエになったばかりの若い女性の励みになる。こうした光景はどこにでもあるわけではないから」と話した。

 パティシエのマチルド・ジャンヌ(Mathilde Jeannes)さん(27)は「刺激を受けている。ガラスの天井はないと分かった」と話した。(c)AFP/Olga NEDBAEVA