■「うつろなまなざし」の若者

 こうした事件では、被害者、加害者ともに低年齢化が進んでいる。

 スウェーデンの全国犯罪防止協議会が11月に発表したデータによると、22年に銃器の不法所持で取り調べを受けた若者(15~17歳)は336人に上った。これは、10年前の8倍の数字だ。

 ギャンググループは近年、契約殺人を実行させる目的で未成年者を取り込んでいる。中には15歳未満の子どももいる。18歳未満は刑務所に収容されない法律を悪用しているのだ。

 アンデシュ・トーンベリ(Anders Thornberg)元警察庁長官は、「未成年者の方から犯罪組織にアプローチ」して殺人の実行を請け負っている実態を明かした。

 ドルナー教授も、そうした子どもたちは「銃器の扱いに慣れていない」ため、近くに居合わせた人が流れ弾で死傷するケースも多いと説明した。

 ギャングの若い構成員を取材し、その声をまとめた「Mitt ibland oss(私たちの中で)」を刊行した元弁護士のエビン・チェティン(Evin Cetin)氏は、「彼らは犯罪者から学び、寝食を共にして、暴力の文化を吸収している」と話す。

「実際に会うと、若いメンバーの多くは、うつろなまなざしで、自分の人生に価値を見いだせていない」

■「社会統合の失敗」

 スウェーデンで組織犯罪が急増している背景には、移民に対する「認識の甘さ」があるとクリステション首相は述べる。

「無責任な移民政策と社会統合の失敗がこの問題を引き起こしている」との主張だ。

 しかしチェティン氏は、社会統合の問題は、移民の人々が味わう分離や差別に大いに関係していると言う。

「世界有数の富裕国で暮らす若者が、なぜ自ら進んで殺人に手を染め、親友までも殺すようになるのか」

「(犯罪に走る)こうした状況が、彼らが直面する分離や差別、置かれている環境、社会から疎外された経験について多くのことを物語っている」と指摘した。(c)AFP/Nioucha ZAKAVATI