【8月2日 AFP】英イングランド南西部の人口1万3000人の小さな町ポートランド(Portland)。港には、はしけ(平底船)に設置された移民収容施設が浮かんでいる。この施設は、現在移民が収容されているホテルなどの宿泊費を抑えるとともに、渡英を思いとどまらせるための英政府の象徴的政策の一つとなっている。

 巨大な移民収容船「ビビー・ストックホルム(Bibby Stockholm)」は全長93メートル、全222室。最大500人が収容可能だ。

 だが、AFPが取材したポートランド住民は全員、安全上の理由から水上収容施設に反対だと話した。一方、収容施設を「水上監獄」だと批判する人もおり、住民間の分断が鮮明になっている。

 第1陣は1日に到着予定だったが、直前に中止になった。

 地元当局は7月31日夜、消防当局が安全上の懸念を示したことから、収容開始が延期されたと発表。政府は新たな日程を現時点では発表していない。

■分断

 ポートランドの住民ヘザーさん(33)は、周りの反移民感情にショックを受け、反人種差別団体「スタンド・アップ・トゥ・レイシズム(Stand Up To Racism)」の地元支部に加入することを決めた。

 同団体が亡命希望者のために用意した支援物資をヘザーさんが記者らに見せていると、通りすがりの車から罵声が飛んできた。近くには「侵略を止めろ」と書かれたプラカードを持つ女性もいた。

「今はいつもこうだ」とヘザーさん。「中には『やつらは犯罪を犯す、子どもをレイプする、子どもに危害を加える』と言う人もいて、腹立たしい」

 同じくポートランドに住むリチャード・ハットフィールドさん(53)も水上収容施設には否定的で、はしけのことを「水上監獄」だと呼んだ。

「難民は特定の地域だけではなく全国的に人々の意見を二分する問題になってしまっている」と指摘。政府は市民を「分断」させようとしていると主張した。