【11月29日 AFP】英国は28日、ギリシャとの首脳会談を直前になり中止した。大英博物館(British Museum)に展示されている古代ギリシャの遺物の所有権をめぐる長年の対立が一因だが、両国の説明は食い違っている。

 ギリシャのキリアコス・ミツォタキス(Kyriakos Mitsotakis)首相は28日、3日間の訪英の集大成として、リシ・スナク(Rishi Sunak)首相とロンドン・ダウニング街(Downing Street)10番地の首相官邸で会談する予定だった。

 だが、直前に会談が中止されたため、ミツォタキス氏は予定を繰り上げ帰国。「英首相が会談予定時間のほんの数時間前に中止にしたことは不服だ」とする声明を出した。

 報道によると、英国側はオリバー・ダウデン(Oliver Dowden)副首相との会談を提案したが、ミツォタキス氏はこれを拒否した。

 英国は、ミツォタキス氏が26日のBBCのインタビューで、2500年前につくられた「エルギン・マーブルズ(Elgin Marbles)」と呼ばれるギリシャ・パルテノン(Parthenon)神殿にあった複数の大理石像の所有権について言及したことを問題視した。

「エルギン・マーブルズ」は大英博物館の目玉の一つで、19世紀初頭に英外交官でエルギン伯爵(Earl of Elgin)のトーマス・ブルース(Thomas Bruce)が持ち帰った石像コレクションを指す。

 ギリシャは「エルギン・マーブルズ」は盗まれたと主張しているが、英国は合法的に取得したとしている。

「エルギン・マーブルズ」の所有権をめぐる問題は過去数十年、両国の争いの元となってきた。ギリシャは何らかの貸与契約の形をとって、像を返還するよう働き掛けている。

 ミツォタキス氏はBBCのインタビューで、石像の一部をロンドンに残し、一部をアテネに返還するのは「モナリザ(Mona Lisa)」を半分に切り分けるようなものだと発言。これにスナク氏が立腹したとみられる。

 スナク氏側は、ギリシャ政府は「訪英を、何年も前に決着したパルテノンの彫刻の所有権問題を蒸し返す舞台として利用しないと約束していた」と指摘した。

 だがギリシャの情報筋はBBCの取材に、そうした約束はしていないと主張している。

 ギリシャのアドニス・ヨルギアディス(Adonis Georgiadis)開発・投資相は、ミツォタキス氏の発言は「ギリシャ人1100万人の総意であり、世界中の何百万人もの人が同じ意見だと思う」と述べた。

 外国から略奪された古代遺物の返還を求める圧力は、他の欧米の学術機関と同様、大英博物館に対しても強まっている。しかし、英政府はエルギン・マーブルズを返還しない意向だ。

 スナク氏の報道官は記者らに、もしエルギン・マーブルズをギリシャに貸与すれば、さらなる返還要請の呼び水になる恐れがあり、望ましくないと話した。(c)AFP/James PHEBY