【1月2日 AFP】タイ社交界で有名な女性が、サングラス姿でポーズを取る。インスタグラムに投稿された写真には、有名ブランドのハンドバッグが控えめに写っている。そのスタイリッシュなコーディネートのポイントは、ゾウ柄のパンツだ。

 いわゆる「ゾウ柄パンツ」と呼ばれる薄手のコットン生地のだぼだぼのパンツは、東南アジアではかつて、自分探しの旅をする薄汚いバックパッカーの代名詞として知られた。

 バンコクのバックパッカーの聖地「カオサン(Khaosan)」通りの屋台では、今でも1着150バーツ(約620円)ほどで売られている。

 いま、タイのインフルエンサーや上流階級の間で、このゾウ柄パンツが見直されている。

「ゾウ柄パンツがやばい」と語るのは、ティックトックのフォロワー200万人を誇る「モーリッチ」ことダリンタン・プロムピニットさん(19)だ。「単なる外国人旅行客のお土産ではない」「タイ人も夢中だ」

 チェンマイ(Chiang Mai)の城壁の前でポーズを取っていたトゥイさん(27)は、全身ゾウ柄スタイルだった。

 トゥイさんの友人のオンさん(28)は、「最初は観光客の間で人気だったけど、インフルエンサーのおかげで今ではティックトックではやっている」と話した。「だからはやりに乗ってみた」

 チェンマイ中心部から車で1時間半離れた工場では、大量のゾウ柄生地が縫製されていた。

 経営者のキングカーン・サモンさんによると、ゾウ柄パンツはタイで大流行している。キングカーンさんの工場では約100人の従業員が、1日1000~2000点を生産している。

 ゾウ柄アイテムは、シャツやドレス、ハンドバッグなどもある。新型コロナウイルスの大流行以来、注文が30%増えたという。売り上げの85%をパンツが占めている。

 工場では、中国から生地を輸入し、バンコクでプリントをしている。

 ゾウ柄は大人気だが、クレームが来たこともある。キングカーンさんによると、一部のカンボジア人が、タイがゾウ柄を盗用していると主張してインターネット上で議論になり、これを受けて地元の記者が自宅まで取材に訪れたことがあった。

 キングカーンさんは、これによって売り上げが急増したと笑った。

 バンコクの高級ショッピングセンター内にある「バンコク・テイルズ(Bangkok Tales)では、1着1090バーツ(約4500円)でゾウ柄パンツを販売している。

 デザイナーのラウィワン・ウォラシンシリさんは「ゾウ柄パンツはとても安いと思われているけれど、ヴェルサーチ(Versace)のように見せたかった」と説明した。

 当初は旅行者をターゲットにしていたが、コロナ禍でターゲットをタイ人に変えたという。ティックトックのおかげで驚くほど売り上げは好調だ。

 映像は2023年10月に撮影。(c)AFP/Rose TROUP BUCHANAN / Chayanit ITTHIPONGMAETEE