【11月12日 AFP】パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)最大のシファ(Al-Shifa)病院は現在、数千人の民間人にとって安全な避難先となっている。しかし、イスラエル軍の攻撃が激化、病院のすぐ外まで戦闘は迫っており、逃げ場のない状況に置かれている。

 ガザ市から退避して来たアハマド・シャワさん(18)は、一歩でも外に出れば爆弾の破片でずたずたにされると恐れている。「とても危険だ」と訴えた。

 病院の廊下は避難民であふれ返っている。負傷者も次から次へと担ぎ込まれる。

 ムハンマド・アブサルミヤ(Mohammad Abu Salmiya)院長によると、夜間に繰り返し攻撃にさらされ、数時間にわたり停電となった。

 NGO「人権のための医師団・イスラエル(Physicians for Human Rights Israel)は医師の話として、未熟児2人が攻撃により死亡したとしている。

 病院を離れることを恐れる人は多い。

 国境なき医師団(MSF)の医師らは、病院から出ようとして撃たれた人々を見たと語る。

 病院の地下に家族と共に避難している看護師は「私たちはここで殺されようとしている。何とかしてほしい」と訴えた。

 イスラエル軍は病院への攻撃はないとしているが、周辺でイスラム組織ハマス(Hamas)の戦闘員と交戦していることを認めた。

 イスラエルは、ハマスがガザの複数の病院の地下にトンネルや防空壕(ごう)を造り、民間人を人間の盾にしていると非難。ハマス側はこれを否定している。

 国連(UN)の人権問題調整室(OCHA)は、10日のイスラエル軍によるガザ市およびガザ北部の病院周辺での激しい空爆により、「幾つかの病院が直撃を受けた」としている。

 OCHAによると、ガザの36病院のうち約20か所がもはや機能してない。

 シファ病院の外科責任者、マルワン・アブサダさんは慈善団体「パレスチナ人のための医療援助(Medical Aid For Palestinians)」に対し、病院周辺では至る所で銃爆撃があったと話した。攻撃の音は途切れることがなかったと言う。

「誰もシファ病院に来られないし、出て行くこともできない」

 MSFは「シファ病院内の民間人は、イスラエル軍に死刑執行を宣告されたようなものだ」と例えた。

 国際赤十字委員会(ICRC)のロベルト・マルディーニ(Robert Mardini)事務局長は、「病院に閉じ込められた患者や職員が直面している過酷な状況は終わらせなければならない」「病院と患者、職員、医療を守る必要がある」と強調した。

 戦闘は激しさを増しているが、院内の医師らはとどまる意向だ。

「私たちが去ることはできない。私を含む外科医がいなければ、誰が患者の面倒を見るのか」と、MSFのモハメド・オベイド医師は語った。「手術後、歩けない状態の患者も多く、彼らは避難できない」

 院長の決意も固い。「どんな犠牲を払ってでもわれわれはここから出て行かない」(c)AFP/Adel Zaanoun with Anuj Chopra in Jerusalem