■石灰石が「スポンジ」に

 エアルーム自身は、2035年までに毎年10億トンのCO2の回収を目指している。その間、排出権取引には応じないため、他企業が化石燃料の使用を継続する誘因にはならないとしている。

 米国科学アカデミー(US National Academy of Sciences)は、今世紀末までに毎年100億~200億トンのCO2を削減する必要があるとしているが、エアルームの計画はこれに寄与するものとなりそうだ。

 エアルームの共同創設者で研究部門責任者のノア・マックイーン(Noah McQueen)氏は「当社は自然界に存在する石灰石を加工し、大気中のCO2を吸収するスポンジにする」と説明。「そのスポンジを絞り、吸い取ったCO2を地下に永久に貯留する」と語った。

 インド出身のサマラ氏は、幼い頃に経験したサイクロンや干ばつ、厳しい熱波が忘れられない。「母はぬれタオルを扇風機にかぶせ、エアコン代わりにしていた」と話す。

「気候変動は貧しい人々に不公平な影響を及ぼす」とも語った。

 サマラ氏は米国でエンジニアリングを学んだ。卒業後、フィンテック企業スクエア(Square)でしばらく働いた後、エレクトロニクス企業を立ち上げた。

 しかし、「気候変動への思いは常にあった」と言う。毎年のようにカリフォルニア州で発生する山火事や消えゆくサンゴ礁に突き動かされ、方向を変えた。2018年のIPCC報告書に目を通し、技術革新と投資を必要としていたCO2回収技術に的を絞った。