【11月2日 AFP】イスラエル人インフルエンサーのマヤ・キイ(Maya Keyy)さんは1日、ヨガパンツに防弾チョッキ姿で、イスラム組織ハマス(Hamas)の襲撃を受けたキブツ(生活共同体)で動画を撮影して回った。ファッションや食べ物を紹介してきたSNSアカウントのフォロワー数万人に、ハマス襲撃の被害を伝えるためだ。

 パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)を実行支配するハマスは10月7日、イスラエルを襲撃。イスラエル軍によると、ガザ地区から2キロの場所にあるキブツ「キスフィム(Kissufim)」では、タイ人労働者6人を含む15人が殺害された。

 イスラエル軍の砲撃やドローンの音が響くキスフィムで、キイさんはAFPに「ソーシャルメディアでも戦争が起きている。違う形の戦争だ」と話した。「ファッションに関して影響力を使っていたけど、今はユダヤ人として影響力を行使している」

 イスラエル政府はこのほど、血痕や銃痕、焼け焦げた民家が残るキスフィムに数人のインフルエンサーを招待した。

 キイさんもその一人で、インスタグラムで50万人、ティックトックで30万人のフォロワーがいる。

 洋服やプールサイドのビキニ姿の自撮り写真が並んでいたキイさんのインスタグラムアカウントは、10月7日以降一変した。今ではフォロワーにイスラエル支持を呼び掛ける投稿を続けている。

「世界に真実を伝えるために何もかも中断した。起きたことすべてを否定している人がいるなんてありえない」「実際に(現場に)行って、本当に起きたことなのだと皆に証明しなければ」と話した。

 キイさんはソーシャルメディア戦略は、前線の一つだと考えている。「終わりが見えない」この戦争で、「私たちは、ユダヤ人存続のために戦い続けなくてはならない」と強調した。

 世界の注目は今、イスラエル軍の激しい報復攻撃によるガザ地区の被害に集まっている。イスラエルはブランドマーケティングの一般的な戦略を使って、インフルエンサーを通してハマスの攻撃による被害を発信し、そもそもの引き金となった襲撃に注目を戻したい考えだ。

■「伝えるためにここにいる」

 アリナ・ラビノビッチ(Alina Rabinovich)さん(26)は、複数のSNSで計50万人以上のフォロワーがいる。食べ物や芸能関係のインフルエンサーとして活動してきたが、「あの事件以降、ここで起きたことについて語ること以外のコンテンツはやりたくないと思った」と話した。

 イスラエル政府がキスフィム訪問について打診してくると「二つ返事で引き受けた」という。

 ラビノビッチさんは、ガザ地区の目と鼻の先にあるキスフィム訪問は危険を伴うと理解している。

 ガザ地区へ向けて撃たれた砲弾の音にたじろいだが、「起きたことを伝えるため私はここにいる。他の国ならおかしなことかもしれないが、イスラエルでは皆慣れている」と語った。

「世界に真実を伝える必要があり、私たちは始めたばかりだ」 (c)AFP/Joe Stenson