ガザもイスラエルも、虐殺される市民
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【10月13日 AFP】イスラエルに包囲されているパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)。イスラム組織ハマス(Hamas)が7日に奇襲を仕掛けて以降、イスラエル軍はハマスが実効支配するガザへ向かって激しい報復爆撃を続けている。
救助隊はコンクリートの塊を持ち上げ、住宅のがれきの中から遺体を引き上げた。「なぜだ、私たちは何もしていない、ああ神よ」。担架で運ばれる遺体に、親族の青年がとりすがっていた。
イスラエルに侵入したハマスは、外国人を含む1200人以上を殺害した。一方、パレスチナ当局によれば、イスラエルによる報復攻撃でこれまでに1300人以上が死亡している。どちらも大半は民間人だ。
■粉砕された近所
ガザ地区はイスラエルとの残忍な戦闘にこれまで何度も耐えてきた。だがイスラエルは9日、食料や水、電力の供給を遮断し、ガザ地区を「完全包囲」した。
240万人が密集して住む飛び地のガザでは昼夜を問わず、爆音と無人機の飛行音が鳴りやまない。住民の半数は子どもだ。
ハマスはイスラエルへロケット弾を発射し続け、地上侵攻を準備していると思われるイスラエル軍は、ガザとの境界沿いに大量の兵力を集結させている。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は12日、ハマスの「粉砕」を誓った。
AFPの記者は同日朝、イスラエル軍機がわずか30分間でシャティ(Shati)難民キャンプを数十回空爆するのを目撃した。
男性ががれきに埋まった4歳の息子を引きずりだそうとしていた。ちりと血にまみれた少年は「パパ、ママやみんなはどこ?」と泣き叫んでいた。
住民の一人、ジャマル・マスリさんは「私たちは寝ていた。突然、近所全体が爆撃された。私の家も、兄の家も、家族の家も、近所の家も完全に破壊された」と語った。
自宅から出ると、殺りくの光景が広がっていた。「みんな死んでいた。体の一部が散らばり、息子や孫たちの遺体もあった」
「何があったの、パパ?」と叫ぶ娘をなだめた。「大丈夫だ。どこにも行かない。ガザからは離れないよ」
■混乱状態のガザ最大の病院
ガザ地区最大のシファ病院(Shifa Hospital)は大混乱に陥っていた。救急車、家族の消息を求める人々、負傷者が絶え間なく出入りする。
騒然とする中、2人の子どもが地面に座り込みぼうぜんとしていた。看護師がそのうちの1人を医師に引き渡した。医師は「この子を知っている人はいますか?」と叫びながら、薄いマットレスに寝かされた何十人もの負傷者の方へ走り去った。
霊安室からは遺族のうめき声と冷気が漏れ出していた。その床は、白い覆いに包まれた数十の遺体で埋め尽くされていた。
一人の若者がよろめきながら出てきた。「きっと死んでないんだ。ここに遺体はない」と叫んだ。「救急室へ行ってみよう。きっと手術を受けているんだ」。まるで自分に言い聞かせるかのように。