■クマとの「共存」を選んだ町

 一方、ミエルクレアチュクから程近い山間部に位置し、観光客に人気の小さな町バイレトゥシュナド(Baile Tusnad)は、「クマ適応型コミュニティー」を目指している。

 生物学者のイシュトバン・イメクス(Istvan Imecs)氏(36)は、「この地域からクマはいなくならないということを理解する必要がある。しかし、クマは危険を感じれば町にはとどまらない」と主張し、違法とされているクマへの餌付け行為を続ける国内外の観光客を強く批判した。

 イメクス氏と、世界自然保護基金(WWF)などの自然環境保護団体から助言を受け、町はクマには開けられないごみ箱を試験的に導入し、さらに民家やごみ箱の周り400か所に電気柵を設置した。クマとの対立を避けるコツをまとめたアプリもある。

 クマによる被害について当局に寄せられた件数は、2021年には50件あったが、昨年と今年はゼロになった。

 数年前に電気柵を設置したという住民の一人(47)は、「この町でクマが怖くないと言う人がいれば、それはうそをついているか、浅はかなだけ」と述べる。

「私たちは(クマとの)共存に慣れただけだ。他に道はない」 (c)AFP/Ani SAND