■「クマが日常にいるのはロマンチックではない」

 しかし、カルパチア山脈(Carpathian Mountains)の地元住民からは、クマの目撃情報が増えていることに危機感を募らせているとの声が上がっている。

 公式統計によると、2016〜2021年にクマに襲われて命を落とした人は14人。負傷者は158人に上った。

 山間部の牧草地で70頭の牛を放牧している男性(40)は、今年に入ってから既に3頭の牛がクマに殺されたと話す。

 男性はAFPに、牧畜犬6頭を飼う費用もばかにならないと言い、「私たちの命も危険にさらされる」としてクマを撃ち殺してほしいと訴えた。

 先月、中部ミエルクレアチュク(Miercurea Ciuc)市では、学校の校庭にクマが侵入する騒ぎが起きた。クマは木に登ったところで射殺された。

 環境相を3回経験し、現在はミエルクレアチュク(Miercurea Ciuc)市長を務めるアッティラ・コロディ(Attila Korodi)氏は、殺処分強化を訴える。

 AFPに対し、「ルーマニアは欧州諸国から一種の保護区と見られているばかりでなく、全てを保全しなければならない博物館か何かだと思われている」と不満を漏らし、「クマが日常にいる暮らしは、ロマンチックなものでは全然ない」と続けた。

「けが人が出たら、誰が責任を取るのか」

 ルーマニアでは2016年、遊興目的でのクマの狩猟が禁止された。現在は「専門的な技術者」のみにしか許可が与えられていない。

 しかし今年前半、殺処分の年間上限頭数を500頭近くに拡大する法案が提出された。自然保護活動家は、何の問題も起こしていないクマが撃ち殺されている現状を指摘し、娯楽のための狩猟が再び許可されることへの不安を隠せずにいる。