■ウィッグやつけまつげ

 貿易業者は、人や物に対する制限がビジネスにマイナスの影響を与え続けている嘆く。

 家電製品を取り扱う輸出業者は「北朝鮮との取引はここ3年はない」と話した。現在は国内向けの衣料品製造に軸足を置いている。その結果、収入はパンデミック(世界的な大流行)前の半分に落ち込んだという。

「北朝鮮との商売」という政治的に微妙な話題について取材に応じるに当たり、関係者らは匿名を条件とした。

 丹東の税関当局は、貿易の現状についての質問に答えなかった。

 北朝鮮との取引について中国の貿易業者らは、限定的ではあるがゼロではないと話す。一部の医療器具や衣料品などを例に挙げた。

 しかし、核問題をめぐって国連が北朝鮮に科している経済制裁は広範囲に及んでいるため、一部業者は「ひねり」を加えて事業を進めている。

 ウィッグやつけまつげを取り扱っているというある業者は、北朝鮮産の原材料使用を避ける工夫をしていると言う。材料は中国側から送り、北朝鮮では加工だけを行うというのだ。

 こうした事業をめぐっては、北朝鮮の加工業者が拘束施設の収容者を使っていると、人権団体や脱北者が指摘している。

 また、丹東の夜市に店を構えていたある業者は、北朝鮮の海産物を売っていた。より高品質の海産物を手に入れようと、中国の漁師が北朝鮮海域で漁をすることはしばしばあるという。

 朝鮮ニンジンが並べられた別の店の店主は、商品を輸入するための特別な「ルート」があると言う。ただ、詳細については教えてくれなかった。

■国境再開は来年か

 今のところは中国側だけだが、観光セクターには明るい兆しが見えている。

 丹東の複数の旅行代理店は、コロナ禍で影を潜めていた国内旅行者が数年ぶりに戻り始めたと話す。

 西側諸国からの観光客受け入れのため準備を進めているという代理店2社は、来年には国境が再開するとみている。ただし、公式の通告は特にないようだ。