■「火に油」

 中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は、ヤーヤーをめぐってインターネット上で炎上していることについて、米中間の地政学的な緊張が背景にあると指摘している。

 同紙は3月、社説で「米政府が中国を封じ込めたり、圧力を加えようとしたりしている局面でなければ、これほどの騒ぎにはならなかっただろう」と論じた。

 台湾問題などをめぐり二大経済大国の間の緊張が高まる中、中国政府は反米感情の高まりを黙認し、助長しているとみる米識者もいる。

 中国におけるビジネスリスク調査を専門とするストラテジー・リスクス(Strategy Risks)社のアイザック・ストーン・フィッシュ(Isaac Stone Fish)最高経営責任者(CEO)は、「パンダの扱いをめぐり偽情報を流すことは、火に油を注ぐためのお手軽なやり方だ」と語った。

 偽情報によって中国では対米不信が醸成されるだけでなく、パンダ貸与の停止を声高に求める動きが広がる可能性がある。そうなれば、DFRLabが呼ぶところの、2国間協力の限られた回路の一つが閉じられる恐れが出てくる。

 ワシントン、メンフィス両動物園のほか、サンディエゴ(San Diego)とアトランタ(Atlanta)の動物園も、パンダをすでに中国に返還したか、もしくは来年までに返還することになっている。中国が貸与延長を受け入れない限り、米国の動物園からは50年ぶりにパンダが姿を消すことになる。

 クレムソン大学(Clemson University)のダレン・リンビル教授は「『パンダ外交』がかつて、中国、西側間の関係強化を支援する上で重要な役割を果たしてきただけに、(偽情報)キャンペーンは返す返すも残念だ」と、AFPに語った。(c)AFP/Anuj Chopra with Tommy Wang in Hong Kong