【9月21日 AFP】ベネズエラ政府は20日、治安部隊1万1000人を投入する大規模作戦を実施し、北部アラグア(Aragua)州にあるトコロン(Tocoron)刑務所を、近隣諸国にも勢力を伸ばす強力なギャング「トレンデアラグア(Tren de Aragua)」から奪還したと発表した。

 AFPが最近取材した調査報道記者によると、同刑務所はトレンデアラグアの本部として使用され、動物園やプール、賭博場などの娯楽施設も設置されていた。

 政府は声明で同刑務所の「完全な支配」を取り戻した治安要員らをたたえ、作戦によって「陰謀と犯罪の拠点を解体した」と述べた。

 レミヒオ・セバジョス(Remigio Ceballos)内相は国営放送VTVに対し、同刑務所に収容されていた受刑者は別の施設へ移送されると語った。

 同刑務所の前では、所内で受刑者と共に暮らしていた親族数十人が集まっていた。ある女性は「夫がどこへ連れて行かれるのかの発表を待っている。私も一緒に住んでいたのに追い出された」と語った。

 AFP取材班は刑務所からバイク、テレビ、エアコン、電子レンジなどが運び出されるのを確認した。刑務所前にいた女性の一人は、「それは私たちのものだ!」と叫んだ。

 作戦中に逃亡した受刑者もいるとみられている。政府は追って、「逃亡した犯罪者」を「捜索・拘束」するために作戦の「第二段階」に入ると発表した。

■幹部の「ホテル」

 ベネズエラ最強のギャングとされるトレンデアラグアは同国全土で犯罪に関与し、近隣諸国にも勢力を伸ばしている。

 ベネズエラ人ジャーナリスト、ロナ・リスケス(Ronna Risquez)氏の調査によると、トレンデアラグアの構成員は約5000人。

 約10年前に登場して以降、誘拐、強盗、麻薬密売、売春、恐喝、金の違法採掘などに関与している。

 犯罪関連シンクタンク「インサイトクライム(InSight Crime)」によると、移民の密入国あっせんにも関与している。

 リスケス氏は、トコロン刑務所は完全にトレンデアラグアの管理下にあったとして、「私が所内で見た限り、銃を持った男たちは受刑者で、組織の構成員だった。刑務所を管理していたが、国家のためではない」と述べた。

 同氏によれば、刑務所は銀行、野球場、レストラン、さらにはディスコまで備えており、トレンデアラグア幹部のための「ホテル」と化していたという。

 受刑者の権利擁護団体「自由のための窓(A Window for Freedom)」のカルロス・ニエト(Carlos Nieto)氏によると、トレンデアラグアのリーダー、エクトル・ゲレロ・フローレス(Hector Guerrero Flores)受刑者は、殺人と麻薬密売の罪で禁錮17年の判決を受け、服役していたが、刑務所を自由に出入りしていたとみられている。(c)AFP/Patrick FORT