【9月16日 AFP】赤十字(Red Cross)と世界保健機関(WHO)は15日、自然災害や武力紛争による犠牲者の遺体が健康被害をもたらすリスクはほぼないとし、通説とは異なる見解を示した。

 外傷や火災によって死亡したり、水死したりした遺体は「一般的な予防措置を講じれば通常、病気を引き起こすような生物を保有することはない」と両者は説明している。

 また飲み水による下痢のリスクについても、遺体を水源に接触させたままにしてはならないが、水系感染症の予防には日常的な飲料水消毒で十分だと述べた。

 ただし、エボラウイルス病、マールブルグ病、コレラといった感染症によって死亡した場合や、感染症流行地域で災害が発生した場合は異なると補足した。

 今回の勧告の直前には、リビアでの大規模な洪水やモロッコの地震で数千人単位の死者が出ている。

 こうした災害の被災地では当局が遺体の埋葬を可能な限り急ごうとするが、これは遺族の苦しみを増幅するほか、法的・行政的な問題を引き起こす場合もある。

 赤十字国際委員会(ICRC)でアフリカ地域担当法医学顧問を務めるビラル・サブルー(Bilal Sablouh)氏は会見で、遺体が病気をまん延させるという考えは「誤解であり、そのために埋葬を急ぐことが行方不明者を増やす可能性がある」と指摘した。

 また赤十字の法医学部門トップを務めるピエール・ギョマーシュ(Pierre Guyomarch)氏は「自然災害などで疫病を広げる可能性は、遺体よりも生き残った人々の方が高い」と付け加えた。

 赤十字もWHOも遺体の身元確認後に、明確に分かる場所に埋葬することを推奨している。

 WHOの保健緊急事態プログラムでバイオセーフティーを担当する小島和暢(Kazunobu Kojima)科学官は、悲劇に見舞われた被災地当局に対し、「集団埋葬や集団火葬を急がないように」と呼び掛けた。また「尊厳のある遺体管理は遺族や地域社会にとって重要であり、紛争の場合、戦闘の早期終結をもたらす鍵となることも多い」と述べた。(c)AFP