【9月6日 AFP】東日本大震災で被災した東京電力(TEPCO)福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出をめぐり、誤情報や不正確な情報、さらにはデマの波が広がっている。

 その一部は、中国国営メディアによって配信されている。中には、怪獣「ゴジラ(Godzilla)」が海に出現するというAI生成画像を含む報道もあった。

 先月始まった処理水の海洋放出は、国連(UN)の国際原子力機関(IAEA)や国際的な専門家らによって安全と宣言されている。にもかかわらず、中国は日本産水産物の輸入を全面禁止した。

 日本政府は、在北京日本大使館にれんがが投げ込まれるなど、中国国内の日本人や日本企業への嫌がらせが急増しているとして懸念している。

 AFPのファクトチェックチームは、処理水放出をきっかけに特に広く拡散した一部の情報について、その真偽を検証した。

■「太平洋に放射能汚染」

 処理水が海に放出されれば、57日以内に太平洋の大部分が汚染されるとする主張が、中国系SNSのティックトック(TikTok)や微博(ウェイボー、Weibo)、さらにフェイスブック(Facebook)などでグラフィック付きで拡散した。

 この投稿は中国と韓国からのものが主だが、日本国内でも拡散した。微博ではこのグラフィックに関連したハッシュタグの閲覧数が7億回を記録し、他のSNSでも拡散した。

 さらにこのグラフィックは中国中央テレビ(CCTV)や中国国際電視台(CGTN)といった中国国営メディアでも使用された。

 しかし、これは2011年の福島第1原発での事故後にセシウム137の海洋拡散をシミュレーションしたもので、出どころは翌12年に発表された論文だった。

 ドイツ・キール(Kiel)にあるヘルムホルツ海洋科学センター(GEOMAR)が行ったこの研究に関する論文の主著者を務めたエリック・ベーレンス(Erik Behrens)氏はAFPに対し、グラフィックは「メルトダウンが起きてから最初の数週間におけるセシウム137の初期放出のみを捉えており、長期的な放出シナリオについて作成されたものではない」と語った。