■「魚の死骸」

 ユーチューブ(YouTube)では、処理水放出開始後に福島県近海に無数の魚の死骸が打ち上げられたとする動画が投稿され、再生回数が15万回を超えた。この動画はフェイスブックやティックトックでも拡散した。

 中国は日本からの水産物の輸入を禁止し、日本の企業には中国から多数の嫌がらせ電話がかかってきた。また水産物販売店には、商品の安全性を疑う苦情が殺到した。

 CGTNは、日本が「汚染水と毒魚」を海に流していると主張するミュージカル風のパロディー動画まで制作した。

 だが、AFPがファクトチェックを行ったところ、この魚の映像は今年2月、日本海に面した新潟県糸魚川市の海岸に大量のイワシが打ち上げられたときのものだった。

■「放射性物質の拡散予測」

 7月に日本政府が海洋放出を準備していた段階で、ソーシャルメディアには米海洋大気局(NOAA)による太平洋への放射性物質の拡散予測とする画像が出回った。

 元となった韓国語の投稿は、日本が「ジオサイド(地球破壊)」を行っていると糾弾していた。この投稿はフェイスブック上で、韓国語および中国語で広くシェアされた。

 SNSのX(旧ツイッター〈Twitter〉)では、中国人実業家の宋文洲(Sou Bunshu)氏が取り上げ、80万回以上閲覧された。

 だが、NOAAの広報担当者はAFPに対し、この画像は2011年に日本近海で発生した海底地震による津波の最大波高を予測したものだと述べた。

■「黒い水」

 微博上には、福島から排出されたものだとする黒い水が海に流れ込む動画が投稿された。中国語のキャプションは「日本は原発廃水を放出している。わが国の生態系や生命に影響はないのか」と問い掛けていた。

 元の投稿は1万6000回以上再生され、さらにフェイスブック、ユーチューブ、微博、X、ティックトックの中国語版の抖音(Douyin、ドウイン)などで計80万回再生された。

 だが実際には、この動画はメキシコ・アカプルコ(Acapulco)湾で2020年に撮影され、報道されたものだった。

 メキシコ国家水委員会(CONAGUA)は当時、アカプルコの下水道を管轄する自治体機関を刑事告発したと発表していた。(c)AFP/Saad Sayeed and Tommy Wang