【8月19日 AFP】米ハワイ州マウイ(Maui)島で100人以上の死者を出す大惨事となった山火事。大火となった原因として注目されているのが、過去数十年でハワイ諸島にはびこるようになった侵略的外来種の植物だ。

 外来種の植物は干ばつに強く、複雑な地形にも入り込み、固有種を徐々に駆逐していく。同じく大規模な山火事が多い米国西部でも脅威を増している。

「侵略的外来種の植物は景観を一変させてしまう。そして燃えやすい」と指摘するのは、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(University of California, Santa Barbara)の生態学者、カーラ・ダントニオ(Carla D'Antonio)教授だ。「火が発生しやすい状況を作り出し、そして突然、火災が多発する」

 ヒゲクリノイガ、ギネアキビ(ギニアグラス)、トミツグラス(トウミツソウ)といった外来種の草はほとんどがアフリカ原産。牧草として導入された当時は、数十年後に及ぼす危険性など知るよしもなかった。

 こうした外来種は枯れても腐らず、「骨のように乾燥した状態で長期間、立ち枯れたままだ」とダントニオ氏は説明する。また固有種よりもたくましく、火災にもよく耐え、徐々に固有種と置き換わっていく。

 ハワイではグローバル化の影響で1990年代にサトウキビ・プランテーションが廃止され、土地が放棄されたために、外来種の侵入を許す広大なスペースが生まれた。

 ハワイ大学マノア校(University of Hawaii at Manoa)の火災生態学者クレイ・トラオアーニヒト(Clay Trauernicht)氏は「ハワイでも乾燥化は進んでいるが、火災問題のほとんどは『ポスト・プランテーションの時代』に入って、土地所有者が放置した土地が外来種の草原になってしまったことに起因する」と指摘する。

 同氏によれば、ハワイの年間焼失面積はここ数十年で4倍になっている。

 マウイ郡は報告書で「危険な燃料源」となっている外来種をハワイ固有の植物に再び置き換え、「発火の可能性を減らすと同時に土地の保水力を高める」計画を推奨している。

■米本土でも問題の外来種

問題はハワイに限ったことではない。米国本土でも「西部の砂漠や針葉樹林、沿岸部の低木林などに侵略的外来種のイネ科植物が生い茂り、生態系の一部と化している」とダントニオ教授は指摘する。

 教授自身、毎週土曜の夕方にはカリフォルニア州サンタバーバラ(Santa Barbara)近郊の山間部で、近所の住民と道端の除草活動をしている。たばこの吸い殻や車のオーバーヒートによる火災を防ぐためだ。2018年に80人以上の死者を出した山火事は、送電線が乾燥した草に接触し発火した。

 アリゾナ州のサワロ国立公園(Saguaro National Park)を象徴するサボテンも、外来植物のヒゲグリノイガに脅かされている。この草がびっしりと生えてしまい、サボテンの芽が育たない上、山火事が助長されているのだ。

 2019年の研究によると米国では、侵略的外来種6種のせいで山火事の頻度が最大2.5倍となった。

 ダントニオ氏は外来種の侵入に加え、人為的な景観の改変、気候変動によって悪化した干ばつ、さらに災害に対する準備不足がハワイの山火事のような悲劇を引き起こしているという。「平均的な火災ではなく、極度の火災にどう備えるかが大事だ」 (c)AFP/Lucie AUBOURG