【5月23日 CNS】有名な観光地でもなかった中国のある地方都市に観光客が詰めかけている。人口約470万人で、重工業や陶磁器産業など第二次産業が7割を占める山東省(Shandong)淄博市(Zibo)は、春秋・戦国時代の斉の都が置かれた古都だ。その街に降ってわいたような串焼きブームが起きたのだ。

 中国では羊の串焼きが多いが、淄博は豚肉が一般的。食べ方も独特である。キッチンで6~7割焼き上げてからテーブルのコンロ上に運び、最後は客が自分の好みまで焼き上げる。焼き上がった肉には薬味のネギと特製タレをつけて薄い皮に巻いて食べるのだ。

 伝統の串焼き自体は古くからあるが、どうやらユニークな串焼きを食べる動画が最近になってSNSでバスったことがブームの火付け役になったようだ。もっとも淄博市政府も早くから串焼きの町おこしに動いていた。3月には串焼き協会の設立と串焼きマップの作製を発表した。25万食の消費券を配り、名店のコンテストも実施した。鉄道部門も協力して串焼き専用列車や専用バス路線も開設した。官民一体となった準備が串焼きブームを支えている。

「これほど街がにぎわうのは5月と10月の連休だけだったが、今は毎週末になった。平日も午後5時半ごろには満席になる。時には4時間待ちということもある」と串焼き店の店主。中国のネット上には「淄博にこれほど活気があふれたのは斉の国だったとき以来」とのジョークも飛び交う。

 一方で、串焼きと観光だけでは地域全体の景気浮揚を図るには限界があることも事実だ。地域一丸となった串焼き町おこしの成功がきっかけとなって、ビジネス環境が改善され、経済の底上げにつながってほしいというのが市民の望みなのである。(c)CNS/JCM/AFPBB News